ロンドン塔で「王冠泥棒」になりかけた私が教える、絶対に知っておくべき見どころと失敗談

ロンドン塔と聞いて、あなたはどんなイメージを抱きますか?美しいお城?それとも恐ろしい処刑場?実際に足を踏み入れてみると、そのどちらでもありながら、想像をはるかに超える魅力的な場所でした。テムズ川のほとりに佇む1000年の歴史を持つこの要塞は、ロンドン観光の定番スポットですが、実は多くの観光客が見逃している秘密がたくさんあるのです。

ロンドン塔って実際どんな場所?思っていたイメージと違った!

テムズ川沿いに建つロンドン塔の全景

ロンドン塔は、1066年にウィリアム征服王によって建設が始まった歴史ある要塞です。場所はロンドン中心部、テムズ川の北岸に位置し、最寄り駅のタワーヒル駅から徒歩3分というアクセス抜群の立地にあります。

私が初めて訪れた時に驚いたのは、その規模の大きさでした。「塔」という名前から単体の建物を想像していたのですが、実際には21の塔と城壁に囲まれた巨大な要塞複合体だったのです。敷地面積は約7.7ヘクタールもあり、じっくり見学すると半日はかかります。

入場料は大人約35ポンド(約6,000円)と決して安くはありませんが、オーディオガイド(日本語対応)が含まれているので、歴史的背景を理解しながら見学できます。開館時間は季節によって異なりますが、基本的に平日は10時から17時30分、土日は9時から17時30分です。

Crown Jewels(王室の宝物)は本当に圧巻?実際に見た感想

ロンドン塔内のクラウンジュエルズ展示室

ロンドン塔最大の見どころといえば、間違いなくクラウンジュエルズ(王室の宝物)です。現在も実際に使用されている王冠や宝石類が展示されており、その価値は計り知れません。

特に印象的だったのは、エリザベス2世の戴冠式で使用された聖エドワード王冠です。純金製で重さは約2.2キログラム。実際に間近で見ると、その重厚感と美しさに息を呑みます。また、世界最大級のダイヤモンド「カリナン1世」がはめ込まれた王笏も必見です。

ここで私の失敗談をひとつ。あまりの美しさに見とれて写真を撮ろうとしたところ、警備員に厳しく注意されました。クラウンジュエルズエリア内は撮影厳禁なのです。しかも、展示ケースに近づきすぎて警備システムが作動し、一瞬「王冠泥棒」扱いされそうになりました。皆さんはくれぐれもお気をつけください。

知られざる事実:王室の宝物は実は「働いている」

多くの人が知らない事実ですが、ここに展示されている王冠や宝石類は単なる展示品ではありません。現在でも国家的な儀式で実際に使用される「現役」の宝物なのです。そのため、重要な行事がある際は展示が一時的に中止されることもあります。

ビーフィーター(ヨーマン・ウォーダー)のガイドツアーが最高すぎた

伝統的な制服を着たビーフィーターがガイドをする様子

ロンドン塔を訪れたら、絶対に体験してほしいのがビーフィーターによるガイドツアーです。ビーフィーターとは、正式には「ヨーマン・ウォーダー」と呼ばれる伝統的な衛兵で、赤と金の美しい制服に身を包んでいます。

彼らのガイドは単なる歴史の説明ではありません。ユーモアたっぷりの語り口で、時には恐ろしい処刑の話を、時には王室のゴシップを交えながら案内してくれます。私が参加した時のビーフィーターは、アン・ブーリンの処刑の話を「彼女は首がとても細かったので、処刑人も楽だったでしょう」と、ブラックジョークを交えて話していました。

ガイドツアーは入場料に含まれており、約1時間で主要なスポットを回ります。英語での案内ですが、ゆっくりと話してくれるので、中学レベルの英語力があれば十分理解できます。

ビーフィーターになるための意外な条件

ビーフィーターになるには、実は非常に厳しい条件があります。英国軍で22年以上の勤務経験があり、優秀な成績を収めた退役軍人のみが応募資格を得られます。現在約35名が勤務していますが、全員が軍事的背景を持つプロフェッショナルなのです。

White Tower(ホワイトタワー)で感じる1000年の重み

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ロンドン塔の中心部にそびえるホワイトタワーは、1078年に完成した最も古い建物です。高さ27メートルの白い石造りの塔は、まさにロンドン塔の心臓部といえるでしょう。

内部には中世の武器や鎧のコレクションが展示されており、特にヘンリー8世の巨大な鎧は圧巻です。身長180センチを超える王の体格がよく分かる実物大の鎧で、当時の技術の高さに驚かされます。また、最上階からはテムズ川とロンドン市街を一望でき、征服王がこの場所を選んだ理由がよく理解できます。

階段は狭く急なので、歩きやすい靴での訪問をお勧めします。私は革靴で行って、石の階段で何度も滑りそうになりました。

Ravens(カラス)がいなくなったらイギリスが滅びる?

ロンドン塔の敷地内で飼われている大きな黒いカラス

ロンドン塔には現在6羽のカラスが飼われており、これが実は非常に重要な意味を持っています。古い伝説によると、「カラスがロンドン塔からいなくなった時、王国が滅びる」とされているのです。

そのため、現在でも専任の「レイヴンマスター」という職員がカラスの世話をしており、万が一に備えて予備のカラスも飼育されています。カラスたちには「ムニン」「フギン」「ジョージ」といった名前が付けられ、一羽一羽が大切に管理されています。

実際に見ると、これらのカラスは普通のカラスよりもかなり大きく、人懐っこい性格をしています。観光客に近づいてくることもありますが、野生動物なので餌を与えたり触ったりするのは禁止されています。

カラスの「就職活動」とリストラ

あまり知られていませんが、ロンドン塔のカラスにも「採用基準」があります。新しいカラスは野生から捕獲されるのではなく、専門のブリーダーから迎えられ、人間に慣れるための訓練を受けます。しかし、性格が攻撃的だったり、逃亡を繰り返したりするカラスは「解雇」され、より適した環境に移されることもあるそうです。

Bloody Tower(血の塔)で聞いた背筋が凍る話

ロンドン塔で最も恐ろしい歴史を持つのがブラッディタワー(血の塔)です。ここは主に政治犯の監禁場所として使われ、多くの著名人が最期の時を過ごしました。

最も有名なのは、1483年に消息を絶ったエドワード5世とヨーク公リチャードの兄弟です。12歳と9歳だった二人の王子は、叔父のリチャード3世によってこの塔に幽閉され、その後行方不明になりました。1674年に塔の階段下から二つの小さな骸骨が発見され、王子たちのものではないかと推測されています。

塔内には当時の監獄の様子が再現されており、壁に刻まれた囚人たちの落書きも見ることができます。特に印象的だったのは、美しい彫刻のような文字で刻まれた名前や日付で、絶望的な状況の中でも人間の尊厳を保とうとした囚人たちの気持ちが伝わってきます。

実際に行ってみて分かった、ロンドン塔観光の注意点

最後に、実体験に基づいたアドバイスをいくつかお伝えします。まず、時間に余裕を持って訪問することです。私は最初、2時間程度で見学できると思っていましたが、実際には4時間以上かかりました。

また、平日の午前中の訪問をお勧めします。週末や午後は非常に混雑し、特にクラウンジュエルズエリアは長蛇の列になることがあります。チケットは事前にオンラインで購入すると割引もあり、入場もスムーズです。

服装については、石畳が多いので歩きやすい靴は必須です。また、建物内は夏でも涼しいことが多いので、薄手の上着を持参することをお勧めします。

ロンドン塔は単なる観光地ではなく、イギリスの歴史そのものが詰まった特別な場所です。血なまぐさい歴史から煌びやかな王室文化まで、人間の営みのすべてがここに凝縮されています。一度訪れれば、きっとあなたもこの場所の魔力に取り憑かれることでしょう。