セント・アイヴスで絶対に避けるべき観光の落とし穴と、地元民しか知らない真の魅力スポット

セント・アイヴスって本当にそんなに特別?

セント・アイヴスの美しい海岸線と町並み

コーンウォール半島の先端近くにある小さな町セント・アイヴス。「イギリス屈指の美しいビーチタウン」なんて言われていますが、実際に足を運んでみると、想像していた牧歌的な風景とは少し違う現実に直面することがあります。夏のハイシーズンには観光客でごった返し、駐車場は朝9時には満車、メインビーチは芋洗い状態なんてことも珍しくありません。

でも、だからこそ知っておいてほしいんです。この町の本当の魅力は、みんなが行く定番スポットではなく、もっと静かで深い場所にあるということを。ロンドンから電車で約5時間、車でも4時間半はかかる決して近くない場所ですが、それでも年間約300万人が訪れる理由があるんです。

朝一番の静寂に包まれた港町の素顔

早朝の静かなセント・アイヴス港

午前7時のセント・アイヴス港は、まるで別世界です。観光客の姿はほとんどなく、地元の漁師たちが静かに網の手入れをしている光景に出会えます。この時間帯なら、ハーバーフロントの石造りの家々をゆっくりと眺めることができ、なぜここが多くの画家たちを魅了してきたのかが理解できるはずです。

実は、セント・アイヴスには「セント・アイヴス・スクール」と呼ばれる芸術家集団が1920年代から活動していました。バーバラ・ヘプワースやベン・ニコルソンといった著名なアーティストたちが、この特別な光を求めてここに移住したんです。その理由は、半島特有の「360度海に囲まれた環境」が作り出す、他では味わえない透明感のある光にありました。

早朝の散歩でおすすめなのが、ウォーフ・ロード沿いのギャラリー巡りです。多くのギャラリーは10時オープンですが、外から作品を眺めるだけでも十分楽しめます。特に「Porthmeor Studios」は、実際に芸術家たちが制作活動を行っている現役のスタジオで、運が良ければ作業風景を見ることができます。

混雑を避けて楽しむ秘密のビーチとは?

人の少ない穴場ビーチの風景

みんなが押し寄せるポースミア・ビーチポースミンスター・ビーチは確かに美しいのですが、夏場は身動きが取れないほど混雑します。でも、地元の人たちが教えてくれた秘密があります。

町から徒歩15分ほど東に歩いたカービス・ベイは、観光客の多くが見落としている穴場スポットです。ここは満潮時には砂浜がほぼ消えてしまうため、潮汐表をチェックして干潮時を狙って行くのがコツ。干潮時には広大な砂浜が現れ、まるでプライベートビーチのような贅沢な時間を過ごせます。

さらにマニアックな情報をお教えしましょう。バックロード・ビーチという、地図にもほとんど載っていない小さなビーチがあります。アクセスは少し険しく、崖沿いの細い道を10分ほど下る必要がありますが、そこには手つかずの自然が残されています。ただし、満潮時には完全に水没するので、必ず潮の満ち引きを確認してから行ってください。

テート・セント・アイヴスの隠された楽しみ方

テート・セント・アイヴス美術館の現代的な建物

テート・セント・アイヴス(入館料£12、開館時間10:00-17:00)は、多くの観光客が訪れる定番スポットです。でも、ほとんどの人が知らない特別な体験があります。それは「アーティスト・トーク」と呼ばれる、毎月第3土曜日に開催される無料のイベントです。

このイベントでは、実際にセント・アイヴスで活動している現役アーティストが、自分の作品や制作過程について語ってくれます。予約不要で、美術館の入館料さえ払えば参加できるのですが、なぜか日本のガイドブックには載っていません。私が参加した時は、地元の彫刻家が「なぜこの町の光が特別なのか」を、実際の作品を前にして熱く語ってくれました。

さらに、美術館の屋上テラスからの眺めは絶景なのですが、多くの人が見逃しています。ここからはポースミア・ビーチが一望でき、特に夕方の光が海に反射する様子は息を呑む美しさです。テラスには椅子も用意されているので、しばらくぼーっと景色を眺めるのもおすすめです。

地元民が愛する本当に美味しいお店

観光地によくある「観光客向け」のレストランではなく、地元の人が本当に通う店をご紹介します。

The Sloop Innは、港のすぐそばにある14世紀から続く老舗パブです。観光客も多いのですが、夕方6時以降になると地元の漁師たちが仕事を終えて集まってきます。ここの名物は「コーニッシュ・パスティ」(£4.50)ではなく、実は「クラブサンドイッチ」(£8.90)なんです。地元で獲れたカニをたっぷり使った贅沢な一品で、観光客向けメニューには載っていません。「today’s special」として口頭で注文する隠れメニューです。

もう一つ教えたいのがPorthgwidden Beach Caféです。小さなビーチにひっそりと佇むこのカフェは、地元のお母さんたちが手作りで営業しています。ここの「フィッシュ・アンド・チップス」(£12)は、その日の朝に港で直接仕入れた魚を使うため、メニューに魚の種類は書かれていません。「今日は何の魚?」と聞くのが地元流です。

知らないと損する交通の裏ワザ

セント・アイヴスの最大の問題は駐車場です。夏場は午前9時には満車になり、路上駐車も厳しく取り締まられます(罰金£70)。でも、地元の人が教えてくれた裏ワザがあります。

レリス駅(St Ives駅の一つ手前)に車を停めて、そこから電車で入るんです。レリス駅の駐車場は1日£3と格安で、電車代も片道£2.20。しかも、この短い電車の旅自体が観光になります。セント・アイヴス・ベイ線は「イギリスで最も美しい支線」と呼ばれ、海沿いを走る約4分間の絶景ルートなんです。

さらに上級者向けの情報です。冬場(11月-2月)のセント・アイヴスは全く違う顔を見せます。観光客は激減し、嵐の日には荒々しい大西洋の波が町を直撃します。この時期のアイランド地区(町の突端部分)は、まるで世界の果てにいるような感覚を味わえます。宿泊費も夏場の半分以下になり、地元の人とゆっくり話せる貴重な機会でもあります。

実際に冬のセント・アイヴスを体験してみると、なぜここが芸術家たちのインスピレーションの源になったのかがより深く理解できます。穏やかな夏の光とは対照的な、ドラマチックで力強い自然の表情を目の当たりにできるからです。

最後に一つだけ注意点があります。セント・アイヴスは携帯電話の電波が不安定な場所が多いんです。特に海沿いの遊歩道や崖沿いのエリアでは圏外になることもあります。事前に地図をダウンロードしておくか、紙の地図を持参することをおすすめします。でも、それも含めてセント・アイヴスの魅力なのかもしれません。デジタルから離れて、純粋に自然と向き合える貴重な時間を過ごせる場所として。