バースで絶対に見逃してはいけない「隠れた名所」と地元民だけが知る裏ルート

なぜバースは「生きた博物館」と呼ばれるのか?

バースの美しい石造建築群

イングランド南西部の小さな街バース。ロンドンから電車でわずか1時間30分の距離にあるこの街が、なぜユネスコ世界遺産に登録されているのでしょうか?答えは街全体が2000年前から続く生きた歴史書だからです。

ローマ時代の温泉から始まり、18世紀ジョージ王朝時代の優雅な建築群まで、バースは時代を超えた美しさを今も保ち続けています。特に注目すべきは、街全体がバース・ストーンという蜂蜜色の石灰岩で統一されていること。これにより、どの角度から見ても絵になる景観が生まれているのです。

実は多くの観光客が知らない事実があります。バースの街並みは自然にできたものではなく、18世紀に father and son の建築家チーム、ジョン・ウッドとジョン・ウッド・ザ・ヤンガーが計画的に設計したもの。つまり、バース全体が壮大な都市計画の傑作なのです。

ローマン・バス博物館で体験する「タイムトラベル」の魔法

古代ローマの温泉遺跡

バース観光のハイライトといえば、間違いなくローマン・バス博物館です。入場料は大人25ポンド(約4500円)と決して安くありませんが、その価値は十分にあります。営業時間は季節により異なりますが、通常9時30分から17時30分まで開館しています。

ここで体験できるのは、単なる遺跡見学ではありません。地下に降りていくと、2000年前のローマ人たちが実際に使っていた温泉施設がほぼ完璧な状態で保存されています。特に驚くのはSacred Spring(聖なる泉)から今も毎分46度の温泉が湧き出し続けていること。

多くのガイドブックには載っていない裏情報をお教えしましょう。館内の最後に温泉水の試飲ができるのですが、この水には独特の鉄分の味があります。ローマ人たちはこの水を「神々からの贈り物」として崇拝していたのです。現代の私たちには正直なところ美味しいとは言えませんが、2000年前と同じ水を飲めるという体験は他では得られません。

実際に訪れてみると分かるのですが、音声ガイド(日本語対応)が非常に優秀で、ローマ時代の人々の生活が手に取るように理解できます。特に、当時の建築技術の高さには圧倒されるでしょう。

ロイヤル・クレセントの「完璧すぎる」建築美に隠された秘密

バースのもう一つの顔が、18世紀ジョージ王朝時代の建築群です。中でもロイヤル・クレセントは、世界で最も美しい集合住宅として知られています。全長150メートルの三日月形の建物群は、まさに建築の芸術品。

ここで興味深いのは、外観は完全に統一されているにも関わらず、内部は各住戸によって全く異なるということ。つまり、美しい外観は「見せかけ」の部分もあるのです。現在も実際に人が住んでおり、1軒の価格は軽く1億円を超えます。

No.1 Royal Crescentは博物館として公開されており(入場料8ポンド、10時30分から17時まで開館)、18世紀の上流階級の生活を垣間見ることができます。当時の家具や調度品がそのまま展示されており、まるで時間が止まったような感覚を味わえるでしょう。

地元の人だけが知る楽しみ方をご紹介します。ロイヤル・クレセントの前に広がる芝生はロイヤル・ビクトリア・パークの一部。ここからバース市街を見下ろす景色は格別で、特に夕暮れ時の蜂蜜色に染まる街並みは息をのむ美しさです。

パルトニー橋で発見する「世界で最も美しい橋」の真実

バースには世界でも珍しい「橋の上に建物が建っている橋」があります。それがパルトニー橋です。このような橋は世界に4つしか存在せず、その中でも最も美しいとされています。

1773年に完成したこの橋は、エイヴォン川に架かる長さ45メートルの石橋。橋の両側にはショップやカフェが建ち並び、橋を渡っているとは思えないほど普通の商店街のような雰囲気です。

観光客の多くが知らない絶景スポットがあります。パルトニー橋を川の下流側から見上げる角度が最も美しく、特にパレード・ガーデンズからの眺めは絵葉書そのもの。橋の上ではなく、川沿いの遊歩道を歩くことを強くおすすめします。

川沿いには小さなカフェMr. B’s Emporium of Reading Delightsがあり、ここで地元産のサイダーを飲みながら橋を眺めるひとときは格別です。営業時間は9時から17時30分まで、日曜日は10時30分からの営業となります。

バース・アビーの「天使の階段」に込められた深い意味とは?

バースの中心部に堂々と立つバース・アビー「天使の階段」の彫刻です。天使たちが梯子を上り下りする様子が石に刻まれているのですが、実はこれには深い宗教的意味が込められています。旧約聖書のヤコブの夢に登場する「天と地を結ぶ梯子」を表現しているのです。

内部に入ると、壁一面に設置された記念碑の数に圧倒されるでしょう。これらは18-19世紀にバースで亡くなった著名人たちの墓碑で、その数は600以上。まさに「石の図書館」のような空間が広がっています。

隠れた見どころとして、塔の上に登るタワー・ツアー(6ポンド)があります。212段の急な階段を登る必要がありますが、頂上からのバース市街の360度パノラマは絶景です。特に、先ほど紹介したロイヤル・クレセントや街全体の蜂蜜色の統一感を上から確認できるのは貴重な体験です。

地元民が愛する「隠れ家カフェ」での至福のひととき

観光名所を巡った後は、地元の人々が愛用するSally Lunn’s Historic Eating Houseで休憩しましょう。ここは1680年から続くイングランド最古のパン屋として知られています。

名物は「Sally Lunn Bun」という大きなブリオッシュのようなパン。甘くもしょっぱくもない独特の味で、バターやジャムをつけて食べるのが伝統的なスタイルです。価格は1個8ポンド程度で、営業時間は10時から18時まで(日曜は11時から17時)。

店の地下には小さな博物館があり、ローマ時代とサクソン時代の遺跡を見ることができます。パンを食べながら考古学的発見も楽しめるという、バースならではの贅沢な体験です。

失敗しないバース観光の「時間配分術」

バース観光で多くの人が犯す失敗は、時間配分を間違えることです。主要スポットをすべて回るには丸1日必要ですが、効率的に回るコツがあります。

朝一番(9時30分)にローマン・バス博物館を訪れ、混雑する前にじっくり見学。その後、徒歩5分のバース・アビーを見学し、11時頃にはパルトニー橋方面へ向かいます。昼食はSally Lunn’sで取り、午後はロイヤル・クレセントとNo.1博物館を見学するのが理想的なルートです。

バース・スパ駅から市内中心部までは徒歩約10分。荷物がある場合は駅にコインロッカー(3-8ポンド)があるので活用しましょう。また、バース市内は石畳が多く、スニーカーなど歩きやすい靴が必須です。

最後に、バースの魅力は急いで回るものではありません。石造りの街並みをゆっくり歩き、2000年の歴史を肌で感じることこそが、この街が与えてくれる最大の贈り物なのです。