キャッスル・スチュアート ゴルフリンクス、プレー代30万円の衝撃と絶景の代償

なぜこのコースは一日で30万円もするの?

キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスの全景

スコットランドのハイランド地方にあるキャッスル・スチュアート ゴルフリンクスは、一日のプレー料金が約30万円という、世界でも指折りの高額ゴルフ場として知られています。この価格を聞いて「そんなに高いなら絶対に素晴らしいはず」と思うかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか。

このコースは2009年にオープンしたばかりの比較的新しいゴルフ場で、スコットランドの首都エディンバラから車で約3時間半の場所に位置しています。アクセスが決して良いとは言えない立地にもかかわらず、世界中のゴルフ愛好家が巡礼のようにやってくるのには、それなりの理由があるのです。

予約が取れない現実、1年待ちは当たり前?

キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスのコース風景

キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスでプレーするための最初の難関は、実は料金ではなく予約です。一日わずか8組限定という超少数制のため、シーズン中の予約は1年以上先まで埋まっていることが珍しくありません。

私が実際に予約を取ろうと電話をかけた際、受付の女性に「来年の夏はいかがですか?」と言われた時の衝撃は今でも忘れられません。しかも、予約時点で全額前払いという条件で、キャンセル料も非常に高額に設定されています。悪天候でのキャンセルも基本的には受け付けてもらえないため、スコットランドの変わりやすい天気を考慮すると、かなりのギャンブルとも言えるでしょう。

営業期間は4月から10月まで。冬季は完全にクローズしているため、実質的な営業日数の少なさも予約の取りにくさに拍車をかけています。

コース設計の秘密、なぜプロも苦戦するのか?

ゴルフコースの難しいホール

キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスは、ギル・ハンスとジム・ワグナーという二人の設計者によって手がけられました。このコースの最大の特徴は、フェアウェイの起伏が極めて激しいことです。平らなライからのショットがほとんど期待できず、常に上り傾斜や下り傾斜、左足下がりや右足上がりからのプレーを強いられます。

特に印象的なのは15番ホール。ティーショットを打った後、ボールがどこに落ちたのかが見えない「ブラインドホール」になっており、初めてプレーする人は必ずと言っていいほど戸惑います。さらに、グリーン周りのバンカーは深く掘られており、一度入ると脱出するだけで2打、3打を要することも珍しくありません。

実際に訪れたプロゴルファーの中には、「こんなに難しいコースは初めて」とコメントする人も多く、アマチュアゴルファーにとってはさらに厳しい試練となります。

絶景の代償、風と雨との戦い

ゴルフ場からの絶景

キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスからの眺望は確かに息をのむ美しさです。マレー湾を一望できる断崖絶壁に作られたコースからは、晴れた日にはアイル・オブ・スカイまで見渡すことができます。しかし、この絶景には大きな代償が伴います。

海岸沿いのコースであるため、風の影響が非常に強く、時には秒速20メートルを超える強風が吹くことがあります。私がプレーした日も、9番ホールのティーショットで7番アイアンで打ったボールが、向かい風により100ヤードも戻されてしまい、同伴者と顔を見合わせて苦笑いしたことを覚えています。

さらに、スコットランド特有の急激な天候変化により、プレー中に雨、晴れ、曇り、霧が入り乱れることも日常茶飯事です。防水性の高いレインウェアは必須装備と言えるでしょう。

知られざる地元の秘密、羊との共存

ゴルフコース周辺の自然風景

キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスには、一般的なゴルフ場では絶対に見られない光景があります。それは、コース内を自由に歩き回る羊たちです。これはトラブルではなく、実は環境保護の一環として意図的に行われているのです。

羊たちはラフエリアの草を食べることで、自然な芝の管理を行っています。これにより、人工的な芝刈り機の使用を最小限に抑え、環境への負荷を減らしているのです。プレー中に羊がフェアウェイを横切ることもありあり、地元ルールでは「羊に当たったボールは動物妨害として無罰でドロップ可能」という、世界でもここだけの特別ルールが設けられています。

地元のキャディーに聞いた話では、羊たちは意外にもゴルフボールに興味を示すことがあり、時折ボールを蹴飛ばしてしまうこともあるそうです。「羊がナイスショットを手助けしてくれることもある」と冗談交じりに話してくれましたが、実際にそんな場面に遭遇したら、高額な料金を払った甲斐があったと思えるかもしれません。

クラブハウスの質素さに驚愕

30万円という料金から想像される豪華なクラブハウスとは裏腹に、キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスのクラブハウスは驚くほど質素です。小さな石造りの建物で、ロッカールームも最低限の設備しかありません。シャワー設備はあるものの、日本の高級ゴルフ場で見慣れたサウナやマッサージルームなどは一切ありません。

レストランのメニューも限定的で、スコティッシュサーモンとラム肉を使った料理が中心となっています。味は確かに美味しいのですが、選択肢が少ないため、好き嫌いの多い人には少し厳しいかもしれません。ただし、地元産の食材にこだわった料理は、スコットランドの食文化を体験する良い機会でもあります。

コストパフォーマンスの真実

結論として、キャッスル・スチュアート ゴルフリンクスは決して万人におすすめできるゴルフ場ではありません。設備の豪華さや接客サービスの質を期待する人には、正直なところ期待外れに感じられる可能性が高いでしょう。

しかし、純粋にゴルフの挑戦と自然の美しさを求める人にとっては、この上ない体験を提供してくれます。世界中のどこでも味わえない独特の難しさと、スコットランドの大自然の中でプレーする贅沢さは、確かに特別な価値があります。

最寄りの宿泊施設はインヴァネスまで車で1時間ほどかかるため、前日入りは必須です。また、レンタルクラブの質はあまり良くないため、可能であれば自分のクラブを持参することをおすすめします。30万円という料金に見合う価値があるかどうかは、結局のところあなたのゴルフに対する価値観次第と言えるでしょう。