スウィンリー・フォレスト ゴルフで私が体験した「英国王室御用達コース」の洗礼と驚愕の事実

英国王室が愛する森のコースって、実際どうなの?

スウィンリー・フォレスト ゴルフコースの美しい森林風景

ロンドンから車でわずか45分、バークシャー州アスコットにあるスウィンリー・フォレスト ゴルフクラブ。「英国王室御用達」という看板に憧れて訪れた私でしたが、実際にプレーしてみると想像を遥かに超える体験が待っていました。1909年創設のこの名門コースは、確かにエドワード7世から現在のチャールズ3世まで、歴代の王室メンバーに愛され続けています。

でも正直に言うと、最初は「観光客向けの宣伝文句でしょ?」と半信半疑でした。ところが実際にクラブハウスに足を踏み入れた瞬間、その空気感の違いに圧倒されたのです。

予約から当日まで:想像以上に厳格だった入会システム

英国の伝統的なゴルフクラブハウスの外観

スウィンリー・フォレストは完全なメンバーズクラブです。つまり、一般の観光客が「今日プレーしたい」と思っても、そう簡単にはいかないのが現実。私がプレーできたのは、現地在住の友人がメンバーで、その紹介があったからこそでした。

年会費は約2,500ポンド(約45万円)で、入会には既存メンバー2名の推薦が必要。さらに入会審査には数ヶ月かかることも珍しくありません。この厳格さこそが、クラブの格式と品格を保っている理由なのです。

ビジター料金は平日で約150ポンド(約2万7,000円)、週末は約200ポンド(約3万6,000円)。決して安くはありませんが、この体験を考えれば納得の価格設定です。

コースの真実:美しさの裏に隠された戦略的な罠

スウィンリー・フォレストの戦略的なコースレイアウト

18ホール、パー70の比較的コンパクトなコース設計ですが、これが侮れません。ヒースランド(荒野)特有の地形を活かした設計は、見た目の美しさとは裏腹に、非常に戦略性が高いのです。

特に印象的だったのは10番ホール。一見すると短いパー4で簡単そうに見えるのですが、グリーン手前の巧妙な起伏とバンカーの配置が、多くのプレーヤーを翻弄します。私もまんまとその罠にハマり、ダブルボギーを叩いてしまいました。

コースの総距離は約6,000ヤードと現代基準では決して長くありませんが、風の影響を計算に入れたクラブ選択が要求される、まさに「頭脳戦」のゴルフです。

クラブハウスで感じた英国ゴルフの本物の伝統

英国伝統のクラブハウス内装と雰囲気

プレー後のクラブハウスでの時間こそ、このクラブの真価を感じる瞬間でした。19世紀から続くドレスコードは今も厳格で、襟付きシャツ、長ズボン、革靴は必須。ジーンズやスニーカーでの入館は一切認められません。

クラブハウス内のバーで飲んだ一杯のビール(約6ポンド)が、なぜかこれまで飲んだどのビールよりも美味しく感じられました。それは値段や銘柄の問題ではなく、その場の雰囲気、歴史、そして共にプレーした人々との会話があってこそのものでした。

壁に掛けられた歴代キャプテンの肖像画を眺めながら、「ここで王室の方々も同じようにくつろがれているのだな」と想像すると、不思議な感慨を覚えました。

意外な発見:王室との深すぎる絆の真実

ゴルフコースでのプレー風景と自然環境

最も驚いたのは、このクラブが単なる「王室御用達」ではなく、実際にエドワード8世(後のウィンザー公)がキャプテンを務めていたという事実でした。これは観光ガイドブックには載っていない、クラブの誇りともいえる歴史です。

現在でも王室メンバーが定期的にプレーしており、そのセキュリティ対策は想像以上に厳重。特別な日には一般メンバーのプレーが制限されることもあるそうです。

また、コース設計に携わったハリー・コルトは、日本の軽井沢ゴルフ倶楽部の設計も手がけており、「なるほど、あの戦略的な設計思想はここから来ているのか」と納得しました。

プレー終了後、バークシャーの美しい森を後にしながら思ったのは、「これは単なるゴルフ以上の体験だった」ということ。アクセスの良さ(ヒースロー空港から車で30分)、歴史の重み、そして何より英国ゴルフの本質を体感できる希少な場所として、スウィンリー・フォレストは間違いなく特別な存在です。

実際にプレーして分かった攻略のコツと注意点

このコースを攻略するために最も重要なのは、風向きの読みです。ヒースランド特有の開けた地形では、風が常に変化し、特に午後になると強くなる傾向があります。私がプレーした日も、朝は穏やかだったのに、後半9ホールでは2番手以上の調整が必要になりました。

キャディーは基本的に付きませんが、コースの起伏やグリーンの傾斜は想像以上に複雑です。特に13番ホールのグリーンは、一見フラットに見えて実は微妙な傾斜があり、多くのプレーヤーが3パットを余儀なくされる「鬼門」として有名です。

また、コース内には野生のシカが頻繁に現れます。プレーの邪魔になることはありませんが、急に現れてボールを蹴散らすこともあるので、「自然の一部」として受け入れる心の余裕が必要です。

アクセスと周辺情報:知っておくべき実用的なポイント

ロンドン市内からの最も便利なアクセス方法は、レンタカーでM25とA329を経由するルートです。電車の場合は、ロンドン・パディントン駅からアスコット駅まで約1時間、そこからタクシーで約10分(約15ポンド)となります。

営業時間は季節によって変動しますが、基本的には午前7時から日没まで。冬季(11月~2月)は午後4時頃には薄暗くなるため、早めのスタート時間の予約をおすすめします。

周辺にはウィンザー城(車で15分)やアスコット競馬場(徒歩圏内)もあり、ゴルフと合わせて英国の伝統文化を満喫できる絶好のロケーションです。

最後に:このコースが教えてくれた「本物」の意味

スウィンリー・フォレストでの一日を振り返ると、ゴルフスコア以上に価値のある体験だったと確信しています。確かにアクセスの制約や費用の問題はありますが、英国ゴルフの真髄を理解したいなら、一度は体験する価値のあるコースです。

「王室御用達」という言葉の重みを、身をもって理解できる数少ない場所。それがスウィンリー・フォレスト ゴルフクラブでした。次回英国を訪れる際は、ぜひ信頼できる現地の人脈作りから始めてみてください。その努力は、きっと報われるはずです。