キーウェストで絶対に見逃してはいけない隠れた名所と、観光客が知らない裏事情

アメリカ最南端の楽園は想像以上に奥深い?

キーウェストの美しい海岸線と青い空

フロリダキーズの最南端に位置するキーウェストは、単なるビーチリゾートではありません。この小さな島には、ヘミングウェイが愛した文学の街、カリブ海の影響を受けた独特の文化、そして本土では絶対に味わえない特別な体験が待っています。

マイアミから車で約3時間半、42の橋を渡って到達するこの島は、まさに「陸の孤島」。しかし、その隔絶された環境だからこそ育まれた独特の魅力があるのです。私が初めて訪れた時、最も驚いたのは島全体に漂う「コンク・リパブリック」という独立国家気分でした。

ヘミングウェイハウスで6本指の猫に会える不思議

ヘミングウェイハウスの庭園と歴史ある建物

ヘミングウェイ博物館(907 Whitehead St)は午前9時から午後5時まで開館しており、入場料は大人15ドルです。ここで最も有名なのは、なんと6本指(多指症)の猫たち。現在約50匹の猫が敷地内で自由に暮らしています。

これらの猫の祖先は、ヘミングウェイが船長からもらった「スノーボール」という6本指の猫。遺伝的に多指症が受け継がれ、今でも約半数の猫が6本指なのです。猫たちには全て作家や著名人の名前が付けられており、「シェイクスピア」や「モーツァルト」といった名札を首に下げています。

意外と知られていないのが、この博物館の建物自体の価値です。1851年建築のスペイン植民地様式の邸宅で、キーウェストに現存する最古の石造建築の一つ。ヘミングウェイは1931年から1939年までここに住み、『誰がために鐘は鳴る』や『持てる者と持たぬ者』などの代表作を執筆しました。

サンセット・セレブレーションの真実とは?

マロリー・スクエアで毎晩行われるサンセット・セレブレーションは、キーウェスト観光の代名詞。しかし、観光客の多くが知らない事実があります。この伝統は1960年代後半、地元のヒッピーたちが自然発生的に始めたものなのです。

現在では組織化され、大道芸人たちは事前オーディションを受け、パフォーマンスの場所も抽選で決まります。最も人気の高いパフォーマーは「サンセット・キャット・マン」で、飼い猫に芸を仕込んで披露しています。日没の2時間前から始まり、太陽が水平線に沈むまで続くこのイベントは完全無料です。

ただし、ここで一つアドバイス。最前列で夕日を見たいなら、日没の1時間前には場所取りをしておきましょう。特に冬季(12月〜3月)は観光客が多く、かなりの混雑が予想されます。

デュバル・ストリートの昼と夜、二つの顔

デュバル・ストリートは全長約1.5キロメートルの目抜き通りですが、昼と夜では全く違う表情を見せます。昼間は家族連れも楽しめるショッピングストリートですが、夜になると大人の歓楽街に変貌。

特に有名なのがスロッピー・ジョーズ・バー(201 Duval St)で、ヘミングウェイの行きつけだった場所として知られています。ただし、現在の店舗は当時とは場所が違います。本来のヘミングウェイが通った店は現在「キャプテン・トニーズ・サルーン」(428 Greene St)となっており、こちらの方が歴史的には正確です。

デュバル・ストリート散策のコツは、平日の午前中に歩くこと。観光客が少なく、地元の人々の日常生活を垣間見ることができます。また、多くの店舗が午前10時頃から営業を始めるため、開店準備の様子なども見学できて興味深いものです。

キーライムパイの本当の故郷で味わう至極の一品

キーウェストはキーライムパイ発祥の地として知られていますが、実はこのデザートには興味深い歴史があります。19世紀後半、この地域では新鮮な牛乳の入手が困難だったため、コンデンスミルクを使用したパイが考案されました。

本物のキーライムパイは、キーライム(通常のライムより小さく酸味が強い)、コンデンスミルク、卵黄を使い、クッキークラストの上に乗せて作ります。重要なのは色で、人工着色料で緑色にしたものは偽物。本物は薄い黄色をしています。

おすすめはブルー・ヘブン(729 Thomas St)で、地元の人も認める絶品のキーライムパイが味わえます。1軒の価格は7ドル前後で、午前8時から午後9時まで営業。ここは元々鶏の闘技場だった場所を改装したレストランで、今でも敷地内で鶏が放し飼いされているユニークな店です。

フォート・ザカリー・テイラーの隠された軍事史

フォート・ザカリー・テイラー州立公園(601 Howard England Way)は、美しいビーチで有名ですが、実は南北戦争時代の重要な軍事要塞でもあります。入園料は車1台につき6ドル、徒歩なら2ドルで、午前8時から日没まで開園しています。

この要塞で最も興味深いのは、南北戦争中に北軍が占拠し続けたため、フロリダ州でありながら南部連合に参加しなかった数少ない場所だということです。要塞内部のガイドツアーは毎日午後1時と午後3時に実施され、当時の大砲や武器庫を見学できます。

ビーチエリアは人工的に砂を運んで作られたもので、キーウェストで最も美しいビーチとして地元の人々にも愛されています。シュノーケリングスポットとしても優秀で、海亀との遭遇率が非常に高いことでも知られています。

知る人ぞ知る絶景スポット「キーウェスト灯台」

キーウェスト灯台博物館(938 Whitehead St)は、多くの観光客が見落としがちな穴場スポット。入場料は大人15ドル、午前9時30分から午後4時30分まで開館しています。

この灯台は1848年に建設され、高さ約29メートル。88段の螺旋階段を上った頂上からは、キーウェスト全体とフロリダ海峡を一望できます。特に午後の時間帯は西日が美しく、写真撮影には最適。灯台守の住居は現在博物館となっており、19世紀の海運業や灯台の歴史を学ぶことができます。

グラスボトムボートで体験する海中世界

キーウェストの海は透明度が高く、グラスボトムボートでのサンゴ礁観察が大人気。料金は大人約40ドル、所要時間2時間30分のツアーが一般的です。出発地点はヒストリック・シーポート(Historic Seaport)で、1日3〜4便運航されています。

最も印象的なのは、北米唯一の生きたサンゴ礁「フロリダリーフ」の観察です。水深約6メートルの海底に広がるサンゴ礁には、パロットフィッシュ、エンゼルフィッシュ、ナースシャークなどが生息しています。

船酔いが心配な方は、出発前に酔い止め薬を服用することをおすすめします。また、日差しが強いため、帽子と日焼け止めは必須アイテムです。

コンク・リパブリックの「独立宣言」物語

最後に、キーウェスト最大の「アンチテーゼ」をご紹介しましょう。1982年4月23日、キーウェストは「コンク・リパブリック」として一時的にアメリカ合衆国からの独立を宣言しました。

これは、麻薬取締りを理由とした連邦政府の検問により観光業が打撃を受けたことへの抗議でした。独立宣言後、わずか1分でアメリカに降伏し、復興支援として10億ドルの援助を要求するという、ユーモアに満ちた抗議活動でした。

現在でもキーウェストの至る所で「コンク・リパブリック」の旗を見かけることができ、地元の人々のアイデンティティとして根付いています。この反骨精神こそが、キーウェスト独特の自由で開放的な雰囲気を作り出している源なのかもしれません。

キーウェストは単なる南国リゾートではなく、歴史、文化、自然が絶妙に調和した特別な場所です。表面的な観光だけでなく、その奥に隠された物語に耳を傾けることで、この島の真の魅力を発見できるでしょう。