セントピーターズバーグで「宮殿疲れ」になった私が教える、本当に価値ある観光スポットの見つけ方

エルミタージュ美術館だけじゃない?本当の魅力を見逃すな

エルミタージュ美術館の壮麗な外観

セントピーターズバーグと聞いて、真っ先に思い浮かぶのはエルミタージュ美術館でしょう。でも正直に言います。私は初回訪問で完全に「宮殿疲れ」になりました。あまりにも豪華絢爛すぎて、3時間も見ていると感覚が麻痺してくるんです。

エルミタージュ美術館は火曜日から日曜日の10時30分から18時まで開館していて、入場料は大人700ルーブル程度。でも本当に大切なのは、この街が持つ「生きた歴史」を感じることなんです。美術館だけに時間を使い切ってしまうのは、もったいない。

地元のガイドさんが教えてくれたのは、「ペテルブルグは歩いてこそ分かる街」だということ。宮殿の裏路地には、帝政ロシア時代から続く小さなカフェや、革命の痕跡を残す建物が点在しています。観光バスでは絶対に気づけない、本当の街の表情がそこにはあります。

血の上の救世主教会で感じた、ロシアの複雑な歴史

血の上の救世主教会のカラフルな玉ねぎ屋根

血の上の救世主教会の名前を聞いた時、正直ゾッとしました。でもその背景を知ると、ロシア史の重要な一片が見えてきます。皇帝アレクサンドル2世が暗殺された場所に建てられたこの教会は、9時から18時まで開いていて、入場料は350ルーブル程度です。

内部のモザイク画は圧巻の一言。でも私が一番印象に残ったのは、教会の前で花を売っていた老婆との会話でした。「この教会は悲しみから生まれたけれど、今は希望の象徴なのよ」と彼女は言いました。カタコトの英語での会話でしたが、その言葉の重みは十分に伝わってきました。

意外だったのは、この教会が実は比較的新しい建造物だということ。1907年に完成したこの教会は、ロシア正教会の伝統的な建築様式を忠実に再現していますが、当時としては「復古的」な挑戦でもあったんです。西欧化を進めるペテルブルグにあって、あえてロシアの伝統を主張した建物として、建築史的にも興味深い存在なんです。

ペトロパヴロフスク要塞で知った、この街の「始まり」の物語

セントピーターズバーグの原点を知りたいなら、ペトロパヴロフスク要塞は外せません。1703年、ピョートル大帝がスウェーデンとの戦争中に築いたこの要塞こそが、街の起源なんです。ネヴァ川に浮かぶ小さな島に建てられた要塞は、朝9時30分から夕方6時まで見学可能で、基本エリアは無料で散策できます。

ここで衝撃を受けたのは、要塞内の監獄跡です。帝政時代には政治犯が収容されていて、ドストエフスキーもここに投獄されていたんです。薄暗い独房を見学していると、『罪と罰』の重苦しい雰囲気が現実のものとして迫ってきます。

毎日正午には大砲が撃たれる伝統が今も続いていて、観光客は皆びっくりします。でも地元の人たちはこの音で時刻を確認していて、街の日常に溶け込んだ光景なんです。私も滞在中は、この大砲の音を聞くたびに「ああ、今日も一日が始まった」という気持ちになりました。

マリインスキー劇場で体験した、本物のロシア文化

「バレエなんて興味ない」と思っていた私を変えてくれたのが、マリインスキー劇場でした。1860年開場のこの劇場は、チャイコフスキーの『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』が初演された聖地です。チケットは公式サイトで事前予約が必須で、良い席なら5000ルーブル以上しますが、後方席なら1000ルーブル程度からあります。

実際に観劇してみると、ロシア人の文化に対する真剣な態度に圧倒されました。開演前のホワイエでは、正装した人々が静かに談笑し、まさに「文化を楽しむ」という雰囲気が漂っています。日本のコンサートホールとは明らかに違う、厳粛さと華やかさが同居した独特の空気感でした。

興味深いのは、この劇場が革命後も操業を続けていたこと。ソビエト時代にはキーロフ劇場と改名されましたが、芸術的な質は保たれ続けました。現在でも世界最高峰のバレエ・オペラを上演し続けているのは、単なる偶然ではないでしょう。

ロシア料理で発見した、意外すぎる美味しさ

「ロシア料理はまずい」という先入観を完全に覆されたのが、今回の旅行でした。特にボルシチは、日本で食べたものとは別次元の美味しさ。本場のボルシチは、牛肉と野菜を丁寧に煮込んだ深いコクがあり、サワークリームとディルを加えることで絶妙なバランスになります。老舗レストラン「ペテルブルスキー・ドヴォリク」では、3時間煮込んだボルシチが700ルーブルほどで味わえます。

知られざるロシアンスイーツの世界

意外な発見だったのが、プリャーニキというロシア伝統のジンジャークッキー。蜂蜜とスパイスが効いた素朴な味わいで、お土産にも最適です。街角のベーカリー「ヴォルコンスキー」では、50種類以上のプリャーニキが並んでいて、1個30ルーブル程度から購入できます。

現地の人に教えてもらった隠れた名物がシルニキ。カッテージチーズのパンケーキで、朝食の定番料理です。ふわふわの食感とほんのりとした甘さが絶妙で、ジャムやサワークリームと一緒に食べると最高です。

白夜の季節に体験した、時間感覚の狂い

6月下旬に訪れた私は、白夜という不思議な現象を体験しました。夜11時を過ぎても空が明るく、午前2時頃にようやく薄暗くなる程度。最初は興奮していましたが、3日目には完全に体内時計が狂ってしまいました。

地元の人たちは慣れたもので、遮光カーテンをしっかり閉めて睡眠リズムを保っています。観光客の私たちも、アイマスクは必須アイテムでした。でも午前2時にネヴァ川沿いを散歩する体験は、一生忘れられない特別な時間になりました。

興味深いのは、この時期のロシア人の行動パターン。昼夜の区別がつきにくいため、レストランやカフェは深夜まで賑わっています。普段は早めに閉まる店も、6月は営業時間を延長するところが多いんです。

最後に気づいた、本当の「ペテルブルグ歩き」のコツ

5日間の滞在を終えて分かったのは、セントピーターズバーグは「急がない街」だということ。地下鉄は深くて移動に時間がかかるし、美術館は広すぎて一日では回りきれません。でもそのゆったりとしたペースこそが、この街の魅力なんです。

ネヴァ川沿いの散歩道は特におすすめ。宮殿広場からペトロパヴロフスク要塞まで、約1時間のウォーキングコースですが、途中で何度も立ち止まって写真を撮りたくなります。川沿いのベンチで休憩しながら、対岸の景色を眺める時間も贅沢な体験でした。

最終日に気づいたのは、観光名所だけでなく、普通の住宅街を歩くことの面白さ。帝政時代の貴族の館が今もアパートとして使われていて、歴史と現在が自然に共存している様子が見られます。こういう発見は、急いで名所を巡っているだけでは絶対に得られない貴重な体験でした。