チャールストンの隠れた名門で待ち受ける試練とは?
サウスカロライナ州チャールストンから車で約30分。大西洋に面した美しい島に、世界のゴルファーが憧れる聖地があります。キアワ・アイランド・ゴルフリゾートです。5つのチャンピオンシップコースを擁するこのリゾートは、全米プロゴルフ選手権や全米シニアオープンなど、数々のメジャー大会の舞台となってきました。
しかし、美しい景色に惹かれて軽い気持ちでラウンドに臨むと、想像を絶する洗礼を受けることになります。私自身、日本で100を切るレベルでしたが、ここでは120オーバーという屈辱的なスコアを叩き出してしまいました。それでも、なぜこのコースに魅了されるのか。その理由をお伝えしていきます。
オーシャンコースの美しさと恐ろしさを同時に味わう
キアワ・アイランドの代表格といえば、オーシャンコースです。設計はピート・ダイ。彼の作品の中でも最高傑作の一つとされています。プレー料金は時期によって変動しますが、リゾートゲスト以外は1ラウンド400〜500ドル程度。決して安くはありませんが、その価値は十分にあります。
コースの最大の特徴は、なんといっても大西洋に面した10ホールです。特に17番パー3は、グリーンの向こうに広がる青い海が息をのむほど美しく、写真撮影に夢中になってしまいます。しかし、美しさと引き換えに待ち受けるのが、容赦ない海風です。
私がプレーした日は風速約20メートル。普段7番アイアンで打つ距離でも、5番アイアンでやっと届く状況でした。キャディさんは「今日はまだ穏やかな方だよ」と笑っていましたが、冗談ではありません。この風を読み切れずに、何度も海に向かってボールを献上することになりました。
5つのコースそれぞれの個性に翻弄される?
キアワ・アイランドにはオーシャン、カプライス、オスプレイポイント、タートルポイント、オークポイントの5つのコースがあります。それぞれ全く異なる表情を見せるのが、このリゾートの奥深さです。
オーシャンコースが海風との戦いなら、カプライスコースは森林コースの技術勝負。松林に囲まれたフェアウェイは比較的フラットですが、グリーン周りの微妙なアンジュレーションが曲者です。私は14番ホールで、3メートルのパットを4回も外し、トリプルボギーを叩きました。
オスプレイポイントは湿地帯を縫うように設計されており、野生のアリゲーターに遭遇することも珍しくありません。実際、9番ホールのウォーターハザードで1メートル以上の大きなアリゲーターがのんびりと日光浴をしている光景に出くわし、ボールを諦めたプレーヤーを何人も見かけました。
予約から当日まで、知っておきたいリアルな準備
キアワ・アイランドでのゴルフは、事前準備が成功の鍵を握ります。予約は最低でも1か月前、できれば2〜3か月前に行うことをお勧めします。特にオーシャンコースは人気が高く、直前では希望の時間が取れません。
リゾート宿泊者には予約優遇がありますが、宿泊料金は1泊300〜800ドルと高額です。チャールストンのホテルに泊まって日帰りでプレーする選択肢もありますが、朝の渋滞を考慮すると7時台のスタート時間は厳しくなります。
当日は最低でもスタート時間の1時間前にはクラブハウスに到着しましょう。チェックインに時間がかかることが多く、練習場で海風に慣れる時間も必要です。服装規定は厳格で、襟付きシャツとゴルフシューズは必須。ジーンズやTシャツでは入場を断られます。
スコアよりも記憶に残る、特別な体験の価値
私のキアワ・アイランド体験は、スコア的には完全な失敗でした。しかし、プレー後の満足感は今までのゴルフ人生で最高のものでした。その理由は、ここでしか味わえない特別な瞬間にありました。
オーシャンコースの18番ホール。夕日が大西洋に沈む中での最終パットは、まるで映画のワンシーンのように美しく、120を超えるスコアなど忘れさせてくれました。また、野生のイルカがコース沖を泳ぐ姿を目撃したり、オスプレイ(ミサゴ)が魚を捕らえる瞬間を間近で見たりと、自然との一体感を味わえるのもキアワならではです。
興味深いのは、このリゾートの歴史です。実は1970年代まで、キアワ島はクウェート政府が所有していました。石油で得た富をアメリカの不動産投資に回していたのです。現在のゴルフリゾートの基盤は、この時代の大規模開発によって築かれました。日本ではほとんど知られていない事実ですが、中東とアメリカ南部を結ぶユニークな歴史の舞台でもあるのです。
帰国後も忘れられない、キアワマジックの正体
キアワ・アイランドから帰国して半年が経ちますが、あの悔しさと興奮は今でも鮮明に覚えています。日本のゴルフ場でプレーするたびに「キアワだったらこの風は弱い方だな」と思うようになり、確実にゴルフに対する考え方が変わりました。
特に印象的だったのは、現地のゴルファーたちの姿勢です。スコアに一喜一憂するより、コースとの対話を楽しんでいる様子が印象的でした。ある地元のプレーヤーは「キアワは勝つものじゃない、体験するものだ」と教えてくれました。この言葉が、帰国後も私の心に響き続けています。
営業時間は日の出から日没まで、季節によって変動します。冬季(12月〜2月)は比較的プレー料金が安くなりますが、海風の厳しさは増します。初心者には春(3月〜5月)か秋(9月〜11月)がお勧めです。
次回挑戦への決意と、あなたへのアドバイス
正直に言えば、キアワ・アイランドは万人にお勧めできるゴルフ場ではありません。技術的に高いレベルが要求されますし、費用も相当かかります。しかし、ゴルフというスポーツの本質を問い直したい人、一生の記憶に残るラウンドを求める人には、これ以上ない体験を提供してくれます。
もし挑戦を決意するなら、日本での練習段階から海風を想定したクラブ選択の練習をお勧めします。また、体力的にも demanding なコースなので、普段から歩く習慣をつけておくことが大切です。
私は必ずリベンジに行きます。今度は100を切ることが目標ではありません。キアワの自然と真正面から向き合い、そのメッセージを受け取ることが目標です。あなたもいつか、この特別な島でゴルフクラブを握る日が来ることを願っています。