フロリダの隠れた名門コースって本当?
フロリダ州ジュノビーチにあるセミノール ゴルフクラブは、一般的な観光ガイドにはほとんど載らない超プライベートコースです。私が初めてこのコースの存在を知ったのは、地元のキャディさんからの何気ない一言でした。「あそこは本当のお金持ちしか入れないんだよ」という言葉に、逆に興味をそそられてしまったのです。
このコースは1929年に開場し、設計者はあのドナルド・ロス。彼の作品の中でも最高傑作のひとつとされており、アメリカのゴルフ雑誌では常に全米トップ10に入る評価を受けています。しかし、完全会員制で招待がなければプレーすることは不可能。まさに「知る人ぞ知る」聖地なのです。
なぜこんなに敷居が高いの?
セミノール ゴルフクラブの会員になるには、まず既存会員からの推薦が必要です。そして年会費は約8万ドル(約1,200万円)という破格の金額。入会金に至っては非公開ですが、業界関係者によると「家が一軒買える」レベルだとか。
私が実際に訪れた時に驚いたのは、駐車場に並ぶ車の顔ぶれです。フェラーリ、ランボルギーニ、ロールスロイスが当たり前のように停まっていて、私のレンタカーが場違いすぎて恥ずかしくなりました。クラブハウスも1920年代の面影を残すクラシカルな建物で、まるでタイムスリップしたような錯覚に陥ります。
ドナルド・ロスの設計美学を体感して
幸運にも会員の方のお誘いでプレーする機会に恵まれた私。コースに足を踏み入れた瞬間、なぜこれほど評価が高いのかを理解しました。大西洋からの風が常に吹き抜ける立地を活かし、ドナルド・ロスが計算し尽くしたレイアウトは芸術そのもの。
特に印象的だったのは6番ホール。パー4の425ヤードですが、グリーン手前の巧妙なバンカー配置が絶妙で、どこに打っても次のショットが難しくなる仕掛けになっています。「これぞロスマジック」と呼ばれる所以を身をもって体験しました。フェアウェイは決して広くありませんが、戦略性に富んでいて、頭を使わないと良いスコアは出せません。
セレブリティとの意外な遭遇?
セミノール ゴルフクラブは、多くの著名人が会員として名を連ねています。過去にはドナルド・トランプ(大統領就任前)や、ウォール街の大物投資家たちがプレーしていたことで知られています。私がプレーした日も、某有名企業のCEOらしき人物とすれ違いました。
面白いのは、このコースでは「誰が来ても平等に扱う」という不文律があること。どんなセレブリティでも、ドレスコードを守らなければ入場拒否されます。実際に、カジュアルすぎる服装で来たハリウッドスターが門前払いされた逸話もあるそうです。お金や名声よりも、伝統とマナーを重視する姿勢は、さすが名門クラブといったところでしょう。
一般ゴルファーはどうやって体験する?
「じゃあ一般の私たちには無縁なの?」と思われるかもしれませんが、実は抜け道があります。年に数回開催されるチャリティートーナメントに参加するという方法です。参加費は1人当たり5,000ドル程度と高額ですが、セミノールでプレーできる貴重な機会です。
また、近隣のPGAナショナルやジュピターヒルズクラブといったコースでも、ドナルド・ロス設計の要素を感じることができます。これらのコースなら一般プレーヤーでもアクセス可能で、料金は200-400ドル程度。セミノールの雰囲気を味わいたい方にはおすすめです。
ウェストパームビーチ空港から車で約30分という立地の良さも魅力のひとつ。フロリダゴルフ旅行の際は、外から眺めるだけでもその格式の高さを感じられるはずです。真のゴルフ聖地とはこういう場所なのだと、改めて実感させられる体験でした。