ハノイの第一印象に騙されるな?
ハノイに到着した瞬間、多くの観光客が感じるのは「思っていたより都会だな」という印象です。でも、この第一印象こそが最初の罠なんです。私も初めてハノイを訪れた時、空港からタクシーで市内に向かう途中、高層ビルが立ち並ぶ光景を見て安心しきっていました。
ところが実際に旧市街に足を踏み入れると、想像を絶するバイクの洪水と、歩道を埋め尽くすプラスチック製の小さな椅子、そして耳をつんざくクラクションの音。このギャップに面食らって、せっかくの観光が台無しになってしまう人が後を絶ちません。
ハノイ旧市街は朝6時頃から夜11時頃まで、常にエネルギッシュな活気に満ちています。特にホアンキエム湖周辺は観光の起点となる場所ですが、ここでの過ごし方次第で、あなたのハノイ体験が決まると言っても過言ではありません。
観光客が必ず引っかかる「フォーの罠」とは?
「ハノイに来たらフォーでしょ!」と意気込んで、ガイドブックに載っている有名店に直行する観光客の皆さん、ちょっと待ってください。実は、真のフォー体験はもっと奥が深いんです。
私がハノイで学んだ衝撃的な事実は、フォーには明確な「朝食用」と「夜食用」の区別があるということでした。朝7時頃に街を歩いていると、地元の人たちが路地裏の小さな屋台で、立ったまま器用にフォーをすすっている光景に出会います。これが本当の「フォー・ボー」(牛肉フォー)の食べ方なんです。
フォー・ガー(鶏肉フォー)の名店「フォー・ガー・タン・ロン」は、ハン・ガイ通りにあって営業時間は朝6時から午後2時まで。一杯約25,000ドン(約150円)で、透明感のあるスープは一度飲んだら忘れられません。ただし、観光客向けにアレンジされていない本格的な味なので、香草が苦手な方は要注意です。
地元民が教えてくれた秘密は、「フォーは絶対に昼過ぎまでに食べろ」ということ。午後になると麺がふやけて、あの独特のコシが失われてしまうんです。
文廟で体験する「受験生の聖地」の不思議な光景
文廟(ヴァン・ミュー)は1070年に創建されたベトナム初の大学で、現在でも合格祈願の聖地として親しまれています。入場料は30,000ドン(約180円)で、営業時間は8時から17時まで。
でも、ガイドブックには書かれていない文廟の真の魅力は、毎週土曜日の午前中に見ることができる「現代の受験生たち」の姿なんです。白いアオザイを着た高校生たちが、真剣な表情で石碑に向かって祈りを捧げている光景は、千年の時を超えて学問への敬意が受け継がれていることを実感させてくれます。
私が偶然出会ったのは、石碑の亀の頭を撫でると頭が良くなるという言い伝えでした。82基ある進士の石碑のうち、特に人気なのは正面から3番目の列にある石碑。亀の頭の部分が他よりもツルツルに光っているのは、何百年もの間、人々に撫でられ続けてきた証拠です。
文廟で見逃せない「書道パフォーマンス」の時間
毎日午前10時と午後3時に、境内で書道の実演が行われます。筆に墨をつけて、その場でリクエストされた漢字やベトナム語を美しく書き上げる様子は、まさに芸術そのもの。書いてもらった作品は10,000ドン(約60円)で持ち帰ることができて、素敵な記念品になります。
ホアンキエム湖の夜が教えてくれる「本当のハノイ」?
昼間のホアンキエム湖は観光客でごった返していますが、夜の8時を過ぎると全く別の顔を見せ始めます。湖の周りを散歩する地元のカップル、太極拳を楽しむお年寄り、湖畔のベンチで語り合う学生たち。この時間帯のホアンキエム湖こそが、ハノイの人々の日常を垣間見ることができる貴重な時間なんです。
特に金曜日から日曜日の夜は、湖周辺の道路が歩行者天国になります。子供たちがローラーブレードを楽しみ、若者たちがギターを弾いて歌う光景は、ハノイの若いエネルギーを肌で感じられる瞬間です。
玉山祠(ゴックソン祠)は湖に浮かぶ小島にあって、赤い木橋「テーフック橋」で結ばれています。入場料は25,000ドン(約150円)で、夜7時まで開いています。ここで地元のガイドさんから聞いた興味深い話は、湖に住むという巨大な亀の伝説。実際に2011年まで「クー」と呼ばれる推定年齢600歳の大亀が生息していて、時々湖面に姿を現していたそうです。
旧市街の路地裏で発見した「エッグコーヒー」の衝撃
ハノイで絶対に体験してほしいのが「カフェ・チュン」(Cafe Trung)、通称エッグコーヒーです。「コーヒーに卵?」と眉をひそめる方も多いでしょうが、これが驚くほど美味しいんです。
発祥の店「カフェ・ジャン」は旧市街のファン・フン通り39番地にあって、営業時間は朝7時から夜11時まで。2階建ての古い建物で、まるで民家のような外観なので見つけるのに苦労しますが、それもまた冒険の一部です。
エッグコーヒーの作り方を店主に教えてもらったところ、卵黄とコンデンスミルクを泡立て器で5分以上かき混ぜ、そこに濃いめのベトナムコーヒーを注ぐのがコツ。上層のふわふわした卵の泡と、下のほろ苦いコーヒーが絶妙にマッチして、まるでティラミスのような味わいになります。一杯35,000ドン(約210円)で、この感動が味わえるのは本当にお得です。
知る人ぞ知る「塩コーヒー」という選択肢
エッグコーヒーが有名になりすぎた今、地元の若者たちの間で密かなブームになっているのが「カフェ・ムオイ」(塩コーヒー)です。ホアンキエム湖から徒歩5分のルオン・ゴック・クエン通りにある「The Note Coffee」で飲むことができ、塩とコーヒーの意外な組み合わせが新しい味覚体験をもたらしてくれます。
最後に避けるべき3つの観光トラップ
ハノイ観光で絶対に気をつけたいのが、親切すぎる客引きです。特に「日本語少し話せます」と声をかけてくる人は要注意。彼らが案内する店は大抵、観光客価格の設定になっています。
二つ目は、タクシーの遠回り。正規のタクシー会社「マイリン」や「ヴィナサン」を利用し、メーターが動いているか必ず確認しましょう。空港から市内まで正規料金なら約300,000ドン(約1,800円)です。
三つ目は、水上人形劇のチケット。劇場前で売られている高額なチケットではなく、正規のボックスオフィスで購入すれば100,000ドン(約600円)で楽しめます。タンロン水上人形劇場は午後3時、4時、5時15分、6時半、8時の5回公演で、週末は事前予約が必要です。
ハノイは確かにカオスで、時には疲れ果ててしまう街かもしれません。でも、そのエネルギッシュな混沌の中にこそ、東南アジアの真の魅力が詰まっています。最初は戸惑うかもしれませんが、リズムを掴めば必ずこの街の虜になるはずです。