オレゴンの隠れた名門コースの正体は?
アメリカ西海岸の最果て、オレゴン州の海岸線に突如現れるバンドン・デューンズ ゴルフリゾート。ここは単なるゴルフ場ではありません。プロツアーの舞台にもなるこの場所で、多くの初心者ゴルファーが「こんなはずじゃなかった」と頭を抱える現実があります。
バンドン・デューンズは1999年のオープン以来、全米屈指のゴルフデスティネーションとして君臨し続けています。ポートランドから車で約4時間、最寄りの空港からでも1時間以上かかる立地にも関わらず、世界中からゴルファーが巡礼のようにやってきます。その理由は、ここでしか体験できない「リンクススタイル」のゴルフにあります。
第一の罠:風との格闘で心が折れそうになる瞬間
バンドン・デューンズを訪れる多くのゴルファーが最初に直面するのが、太平洋からの容赦ない風です。普段の日本のゴルフ場とは比べものにならない強風が、あなたの計算を根底から覆します。
私が初めてここでプレーした時、7番アイアンで150ヤード打つつもりが、向かい風でボールが宙に浮いたまま100ヤードも飛ばなかった経験があります。現地のキャディーによると、風速は常時15-25マイル(約24-40km/h)、強い日には40マイル(約64km/h)を超えることもあるそうです。
回避法として、クラブ選択は普段より2-3番手上げることを前提に考えてください。また、ボールの高さを抑えるパンチショットの練習を事前にしておくと、現地での対応がかなり楽になります。ここでは「飛距離」より「方向性」が何倍も重要になります。
第二の罠:フェスキューグラスという名の天然のハザード
バンドン・デューンズの美しい景観を作り出しているフェスキューグラス。この天然の草が、実は多くのゴルファーを苦しめる第二の罠です。
フェスキューグラスは見た目以上に密度が高く、ボールが完全に埋まってしまうことがよくあります。しかも、このラフエリアは想像以上に広範囲に広がっており、少しでもフェアウェイを外すと即座にこの「緑の地獄」にボールが飲み込まれます。
現地のプロショップスタッフから聞いた話では、フェスキューに入ったボールの約30%は見つからないそうです。そのため、予備のボールは通常の倍以上持参することを強くおすすめします。料金はグリーンフィーが1ラウンド$300-400程度ですが、ボール代で予想外の出費がかさむ可能性があります。
フェスキュー攻略の秘訣
地元のベテランキャディーが教えてくれた攻略法は、フェスキューに入った時点で「確実にフェアウェイに戻す」ことだけを考えることです。グリーンを狙おうとすると、さらに深いトラブルに陥る確率が高くなります。
第三の罠:リンクススタイルの地形変化に翻弄される
バンドン・デューンズの最大の特徴は、スコットランドのゴルフコースを再現したリンクススタイルの設計です。しかし、この美しい起伏が第三の罠となってゴルファーを待ち受けています。
コースには無数の「ブラインドショット」(着地点が見えないショット)があり、距離感や方向性の判断が非常に困難です。特にバンドン・デューンズコースの16番ホールは、ティーショットの着地点がまったく見えず、初回プレー時は必ずと言っていいほど戸惑います。
また、グリーン周りの微妙なアンジュレーション(起伏)も曲者です。平らに見えるパットラインが実は2-3度の傾斜があり、読み間違えて3パットを重ねるゴルファーを数多く見てきました。
地形攻略のコツ
現地でのプレー時間は、18ホールで約5-6時間を見込んでおいてください。これは通常のゴルフ場より1-2時間長めです。焦らず、各ホールでキャディーやコースガイドとしっかり相談する時間を取ることが重要です。
知っておくべきバンドン・デューンズの隠れた魅力
これらの「罠」を理解した上でプレーすると、バンドン・デューンズの真の魅力が見えてきます。リゾート内には5つの異なるコースがあり、それぞれが独特の個性を持っています。
最も注目すべきはパシフィック・デューンズコースの11番から16番にかけて続く太平洋沿いのホール群です。特に13番パー3は、断崖絶壁の上に設置されたグリーンへ向かって打つ、世界でも類を見ない絶景ホールとして知られています。プロでも風の読みを間違えると簡単にダブルボギー以上を叩く難易度ですが、成功した時の達成感は格別です。
意外と知られていないグルメ事情
バンドン・デューンズで意外な発見となるのが、リゾート内のダイニングの質の高さです。ザ・グリルレストランでは、地元オレゴン産の新鮮な牡蠣やダンジネスクラブを使った料理が味わえます。特に夕食時の「オレゴン・シーフード・プラッター」(約$45)は、一日のゴルフの疲れを癒してくれる絶品です。
また、宿泊施設は全室オーシャンビューで、朝起きると太平洋の絶景が窓一面に広がります。宿泊料金は1泊$400-800程度と高額ですが、この立地でこの景色を独占できることを考えれば、むしろリーズナブルかもしれません。
実践的な準備とアクセス情報
バンドン・デューンズへのアクセスは、ポートランド国際空港からレンタカーで約4時間のドライブが一般的です。途中、オレゴン州の美しい田園風景や森林地帯を抜けていく道のりも、旅の醍醐味の一つです。
営業時間は季節により変動しますが、夏季(4月-10月)は朝6時30分から日没まで、冬季は8時からとなっています。予約は最低でも1ヶ月前、人気の高い夏季なら3ヶ月前には押さえておくことをおすすめします。
持参必須アイテムとして、防風・防水のレインウェア、予備ボール(通常の3倍)、そして何より「完璧なゴルフは期待しない」という心構えが挙げられます。
最後に伝えたい本当の価値
バンドン・デューンズは確かに難しく、時に心が折れそうになるゴルフ場です。しかし、ここでプレーした後の満足感と成長実感は、他では得られません。スコアが悪くても「また来たい」と思わせる魔力こそが、この場所の最大の魅力なのです。
初心者の方には厳しいコースですが、ゴルフの奥深さと自然の偉大さを同時に感じられる、まさに一生に一度は訪れるべき聖地です。準備をしっかりと整えて、この特別な体験に挑んでください。