メイドストーンゴルフで初心者が涙目になった理由…英国式コースの洗礼と思わぬ落とし穴

メイドストーンゴルフクラブって実際どんなところ?

美しく手入れされたメイドストーンゴルフコースの風景

ケント州メイドストーンにあるこのゴルフクラブは、1893年創設という歴史を持つ老舗コースです。ロンドンから車で約1時間半、電車ならメイドストーン・イースト駅から徒歩20分という立地にあります。料金は平日で約80ポンド、週末は120ポンドほどで、午前7時から日没まで営業しています。

実は私、ここを「のんびりした田舎のコース」だと甘く見ていました。しかし蓋を開けてみると、全英アマチュア選手権の予選会場としても使われる本格派コースだったのです。18ホール、パー70の設計ですが、数字以上にタフなコースレイアウトに初日から圧倒されました。

特に印象的だったのは、コースの美しさと厳しさが共存していること。なだらかな丘陵地帯に広がる緑の絨毯は息を呑むほど美しいのですが、実際にプレーしてみると戦略性の高さに驚かされます。

英国式コースの洗礼?思った以上に手強いレイアウト

戦略的に配置されたバンカーが特徴的なホール

朝一番のティーオフで早速感じたのが、風の影響の大きさでした。メイドストーンは丘陵地帯にあるため、常に風が吹いています。日本のコースに慣れた身には、この風読みが想像以上に困難でした。

特に名物ホールとされる13番パー4は、右サイドに大きな池があり、左サイドは深いラフ。しかも200ヤード地点から急激に下っているため、クラブ選択を完全に間違えました。キャディーさんに「風を読めていませんね」と苦笑いされたのは今でも忘れられません。

バンカーの砂質も日本とは全く違います。細かくてサラサラした砂ではなく、少し重めの砂質で、エクスプロージョンショットのタイミングを掴むのに苦労しました。特に18番ホール手前の大きなバンカーでは、3打も費やしてしまい、同伴者に心配される始末でした。

クラブハウスの格式と意外なフレンドリーさ

伝統的な英国式クラブハウスの外観

130年の歴史を感じさせるヴィクトリア朝様式のクラブハウスは、一歩足を踏み入れると厳格な雰囲気に包まれます。暖炉の前に並ぶレザーソファ、壁一面の歴代優勝者の写真、重厚な木製家具…まさに英国紳士の社交場といった佇まいです。

しかし実際にメンバーの方々と話してみると、想像していた堅苦しさは全くありませんでした。特にプロショップの店長さんは、私の下手な英語にも辛抱強く付き合ってくれ、コース攻略のコツまで教えてくれました。「日本から来たのなら、6番ホールは必ずフェアウェイ左を狙いなさい」というアドバイスは的確で、実際に翌日のラウンドで役立ちました。

ドレスコードは厳格で、襟付きシャツとスラックスは必須。ジーンズやトレーナーは完全NGです。でも逆にいえば、きちんとした服装で行けば、ビジターでも温かく迎えてくれる雰囲気があります。

食事の質に驚いた!英国料理への偏見が覆された瞬間

クラブハウスレストランの美味しそうな料理

正直、英国のゴルフクラブの食事には全く期待していませんでした。ところがメイドストーンのレストランは予想を大きく裏切る美味しさでした。

特に感動したのが「Kentish Lamb with Mint Sauce」という地元産のラム肉料理(約18ポンド)。臭みが全くなく、柔らかくてジューシー。付け合わせの新じゃがいもとローストベジタブルも絶品でした。シェフに聞いてみると、ケント州は実は「イングランドの庭」と呼ばれるほど農業が盛んな地域で、新鮮な食材が豊富に手に入るのだそうです。

デザートの「Sticky Toffee Pudding」も絶対に試すべき一品。温かいプディングにバニラアイスが溶けて、甘さと香ばしさが口の中で踊ります。ラウンド後の疲れが一気に吹き飛ぶ美味しさでした。

知る人ぞ知るメイドストーンの隠された歴史

歴史を感じさせるゴルフコースの一角

実はこのメイドストーンゴルフクラブには、あまり知られていない興味深い歴史があります。第二次大戦中、コースの一部が実際に軍事施設として使用されていたのです。特に現在の9番ホール付近には、ドイツ軍の爆撃機を監視するためのレーダー施設が設置されていました。

戦後、コースを復旧する際に地中から出てきた金属片や設備の一部は、今でもクラブハウスの展示室に保管されています。プロショップの奥にある小さな部屋で、普通の観光客はまず気づかない場所です。私も偶然発見したのですが、当時の写真や資料を見ると、平和な現在のコースからは想像もつかない緊迫した時代があったことがよくわかります。

また、1960年代にはビートルズのジョージ・ハリスンがプライベートでラウンドしていたという記録も残っています。メンバーの古老に聞いた話では、彼は意外にゴルフが上手で、特に7番ホールのロングパットを決めた時は、周りから大きな拍手が起こったそうです。

ローカルならではのプレー上の注意点

メイドストーンでプレーする際の最大の注意点はローカルルールの存在です。特に冬季(11月から3月)は「ウィンタールール」が適用され、フェアウェイでもボールを拾い上げて拭くことができます。これを知らずに泥だらけのボールでプレーしていた私は、同伴者に「なぜクリーンアップしないの?」と不思議がられました。

また、羊の放牧が行われるホールもあります。6番と15番ホールでは、春から秋にかけて実際に羊が草を食べています。ボールが羊の近くに落ちた場合は、無罰でドロップできるルールがありますが、初回は驚いてしまい、羊を避けながらショットしてしまいました。

アクセスと予約のコツ

ロンドンからのアクセスは、M20高速道路を使えば渋滞がなければ1時間15分程度。ただし、週末の朝は渋滞することが多いので、平日のプレーがおすすめです。電車の場合、メイドストーン・イースト駅からタクシーで約10分、料金は8ポンド程度です。

予約は最低でも2週間前、週末なら1ヶ月前には取っておくべきです。特に5月から9月の観光シーズンは激戦で、電話予約の際は「日本から来ました」と伝えると、スタッフが親切に対応してくれます。ビジター料金は時期により変動しますが、グリーンフィー以外にキャディー料金(30ポンド)も考慮しておきましょう。

メイドストーンゴルフクラブは確かに手強いコースでしたが、それ以上に英国ゴルフの奥深さと歴史の重みを感じられる素晴らしい場所でした。初心者には厳しいかもしれませんが、だからこそ上達への意欲がかき立てられる、そんな特別なゴルフ体験ができる場所だと確信しています。