メルボルンって本当に「世界一住みやすい街」なの?
何度も「世界で最も住みやすい都市」に選ばれているメルボルン。でも実際に足を運んでみると、観光ガイドブックには書かれていない驚きの発見がたくさん待っています。私が初めてメルボルンを訪れた時、最初に感じたのは「あれ?思ってたのと違う」という戸惑いでした。
シドニーのような派手さはないものの、メルボルンには独特の魅力があります。それは一日の中で四季を体験できると言われる変わりやすい天気と、街の至る所に隠された小さなカフェや路地裏アートです。フリンダース・ストリート駅を起点に歩き始めると、まるで宝探しをしているような気分になります。
計画段階で知っておきたい「メルボルン時間」の罠
メルボルンを訪れる前に必ず理解しておきたいのが、この街特有の時間の流れです。朝は午前10時頃からお店が開き始め、夕方5時には多くの店が閉まってしまいます。日曜日になると、さらに営業時間が短くなり、月曜日は定休日の店が多いのです。
私が最初に計画を立てた時、東京の感覚でスケジュールを組んだら、行きたかったロイヤル・アーケードの老舗ショップの多くが既に閉店していて愕然としました。この美しいビクトリア朝時代の建物内にあるショップは、平日でも午後5時には店じまいです。
路地裏に隠された「本当のメルボルン」を発見する方法
メルボルンの真の魅力は、メインストリートではなくランウェイと呼ばれる狭い路地裏にあります。ホージア・レーンやデグレイヴス・ストリートは有名ですが、地元の人しか知らない隠れスポットもたくさんあります。
フリンダース・レーンから一本入った小さな路地で、私は忘れられない体験をしました。看板も何もない小さなドアを開けると、そこには10席ほどのカウンターしかないコーヒーショップが。店主のマークさんは元バリスタ世界チャンピオンで、一杯ずつ丁寧に淹れるコーヒーは絶品でした。料金は普通のカフェと変わらない4.5豪ドル程度でしたが、その味は忘れられません。
ストリートアートの裏側にある意外な事実
メルボルンのストリートアートは世界的に有名ですが、実はこれらの多くが合法的に描かれていることを知っていますか?市が指定したエリアでは、アーティストが自由に作品を描くことが許可されています。しかし、古い作品の上に新しい作品が描かれることも多く、今日見た素晴らしいアートが明日にはもう別の作品に変わっているかもしれません。
グレート・オーシャン・ロードの「隠れた落とし穴」
メルボルン観光のハイライトといえばグレート・オーシャン・ロードですが、実際に行ってみて驚いたのは、有名な十二使徒の岩の現在の数です。浸食により実際には8つしか残っていないのに、今でも「十二使徒」と呼ばれ続けています。
この日帰りツアーは朝7時に出発して夜9時頃に戻る長丁場です。距離にして片道約240キロ、車での移動時間だけで往復6時間以上かかります。私が参加したツアーでは、途中のアポロ・ベイで昼食休憩がありましたが、海沿いのレストランでのシーフードプレートは35豪ドルと少し高めでした。
野生のコアラに会える確率はどのくらい?
多くの観光客が期待しているのが、野生のコアラとの遭遇です。グレート・オーシャン・ロード沿いのケネット・リバーという小さな町では、確かに野生のコアラを見ることができます。しかし、彼らは一日の大部分を寝て過ごすため、動いている姿を見られる確率は正直低いです。私が訪れた時も、高いユーカリの木の上で丸まって眠っているコアラを双眼鏡で確認するのがやっとでした。
メルボルンのコーヒー文化に隠された「厳しいルール」
メルボルンは世界有数のコーヒー都市として知られていますが、この街のコーヒー文化には独特の「厳しさ」があります。地元のカフェでは、午後2時を過ぎるとコーヒーを注文しないのが暗黙のルールなのです。
私が午後3時頃にあるカフェでコーヒーを注文しようとしたところ、店員さんに「本当に大丈夫?夜眠れなくなるよ」と心配されました。メルボルンの人たちにとって、コーヒーは午前中から昼過ぎまでの飲み物という考えが根強いのです。
また、メルボルンのカフェ文化で驚いたのは、フラットホワイトというオーストラリア発祥のコーヒーが、実はここメルボルンで生まれたということです。エスプレッソにスチームミルクを注いだこのコーヒーは、今や世界中のスターバックスでも飲むことができますが、本場メルボルンで飲む味は格別です。1杯4豪ドル程度で、本格的なフラットホワイトを楽しめます。
知られざるメルボルンのランチタイムの真実
メルボルンでもう一つ驚いたのは、ランチタイムの短さです。多くのオフィスワーカーは正午から午後1時までの1時間しかランチ休憩を取りません。そのため、人気のレストランでは12時30分を過ぎると既に満席で、1時間待ちということも珍しくありません。
チャイナタウンにあるフラワードラムという老舗中華レストランでは、平日のランチセットが28豪ドルからありますが、予約なしで入るのは至難の業です。営業時間は午前11時30分から午後3時まで、夜は午後6時から午後11時までと、日本のレストランとは少し異なるリズムで動いています。
セントキルダビーチで遭遇した「予想外の住人たち」
メルボルンから路面電車で約30分のセントキルダビーチは、美しい夕日で有名な観光スポットです。しかし、ここで私が体験したのは夕日鑑賞だけではありませんでした。
夕方6時頃、桟橋の先端に向かって歩いていると、突然大きな鳴き声が聞こえてきました。音の正体は、桟橋の下に住み着いている小さなペンギンたちでした。フェアリーペンギンと呼ばれる世界最小のペンギンで、夕方になると海から上がってきて桟橋の下で休憩します。
地元のボランティアガイドによると、このペンギンたちは一年中ここに住んでいるそうです。フィリップ島のペンギンパレードが有名ですが、実はセントキルダでも野生のペンギンを無料で観察できるのです。ただし、フラッシュ撮影は禁止されており、静かに見守ることが求められます。
路面電車で知った地元民の「隠れワザ」
メルボルンの路面電車(トラム)は観光客にも便利な交通手段ですが、地元の人たちには独特の乗り方があります。朝の通勤ラッシュ時には、みんな車両の後方に集まって乗車します。これは前方の座席を高齢者や妊婦さんのために空けておく暗黙の了解があるからです。
また、mykiというICカードを使えば、2時間以内なら乗り継ぎが自由にできます。1日券は4.60豪ドルですが、2時間券なら4.60豪ドルで市内の主要観光地はほぼ回れてしまいます。私は最初、1日券を買ってしまい少し損をした気分でした。
メルボルン観光で本当に気をつけたい「天気の罠」
最後に、メルボルン観光で最も重要な注意点をお伝えします。それは一日の中で気温が15度以上変化することがあるということです。私が訪れた3月のある日、朝は8度で厚手のジャケットが必要でしたが、昼には25度まで上がり、夕方にはまた12度まで下がりました。
現地の人たちは「メルボルンでは一日で四季を体験できる」と冗談めかして言いますが、これは本当です。レストランのテラス席では、ブランケットが常備されているのも、この気温変化に対応するためです。
クイーン・ビクトリア・マーケットで地元の人に聞いた話では、「メルボルンに住んでいても天気予報は当たらない」とのこと。実際、私が滞在した5日間のうち3日間は、朝の天気予報と実際の天気が大きく異なっていました。
メルボルンは確かに住みやすい街ですが、観光客にとっては少しクセのある街でもあります。でもそのクセこそが、この街の魅力なのかもしれません。計画通りにいかない旅こそ、最高の思い出になることを、メルボルンが教えてくれました。