なぜフォルタレザなの?期待と不安が入り混じった出発前
ブラジル北東部セアラ州の州都フォルタレザ。リオやサンパウロの陰に隠れがちですが、実は年間300日以上晴天という驚異的な気候と、手つかずのビーチが残る穴場の観光地なんです。人口約270万人を抱えるこの街は、想像以上に大都市でした。
私が初めてフォルタレザを訪れたのは2019年の7月。南半球の冬にあたるこの時期でも気温は28度前後で、カラッとした心地よい暑さが迎えてくれました。サンパウロのグアルーリョス国際空港から約3時間のフライトで、意外にもアクセスは良好です。
イラセマビーチの美しさに騙された?現実は甘くなかった
フォルタレザ観光の目玉といえば、なんといってもイラセマビーチ(Praia de Iracema)。市内中心部から車で約15分、タクシーで20レアル程度でアクセスできる便利さも魅力的でした。
しかし、ここで最初の失敗が待っていました。美しい夕日の写真に憧れて夕方に訪れたのですが、平日にも関わらず観光客を狙った物売りや客引きの多さに圧倒されました。特に外国人観光客とバレると、しつこく声をかけられることが多いんです。
地元の人に教わったのは、早朝6時頃の時間帯。この時間なら地元の人たちがジョギングや散歩を楽しんでいて、安全で静かな美しいビーチを堪能できます。朝日に照らされた大西洋の景色は、確実に一生の思い出になりました。
メルカード・セントラルで学んだ値段交渉術とは?
観光客なら必ず立ち寄るのがメルカード・セントラル(Mercado Central)。1階から4階まで約560の店舗が軒を連ね、セアラ州の民芸品からブラジル全土のお土産まで何でも揃います。営業時間は月曜から土曜の8時から18時、日曜は8時から12時までです。
ここでの最大の教訓は「最初の言い値の3分の1から交渉を始める」ということ。例えば、カシューナッツを使った伝統的な木彫りの置物を「50レアル」と言われたら、「15レアル」から始めるんです。最終的に25レアル程度で落ち着くことが多いでしょう。
意外な発見だったのは、4階にある小さな食堂。観光地価格ではなく、地元の人向けの価格でタピオカやアサイーが楽しめます。特に北東部独特の塩味のタピオカは、甘いイメージを持っていた私には新鮮な驚きでした。
カイピリーニャだけじゃない?セアラ州独特の飲み物文化
ブラジルといえばカイピリーニャが有名ですが、フォルタレザではカジューイーニャという地酒に出会いました。これはカシューナッツから作られる蒸留酒で、アルコール度数は40度以上。地元の人たちは「カシャーサよりもまろやか」と自慢していましたが、正直なところ、かなり強烈でした。
おすすめの体験場所は、イラセマ地区にあるCentro Dragão do Mar de Arte e Cultura周辺のバー街。夜20時頃から地元の若者たちで賑わい始め、生演奏を聞きながら地元の酒文化を体験できます。ただし、一人での深夜の外出は避け、22時頃までには宿に戻ることをおすすめします。
ジェリコアコアラ行きのバスで起きたハプニング
フォルタレザから約300キロ西にあるジェリコアコアラへの日帰り旅行は、今回の旅のハイライトでした。朝6時発のバスで約4時間の道のりですが、途中で予想外の出来事が起きました。
道中、突然バスが停車。運転手さんが「カンガルー!カンガルー!」と興奮して叫んでいます。なんと野生のプレアー(Preá)という齧歯類の群れが道路を横断していたのです。ブラジルの野生動物といえばジャガーやナマケモノを想像していた私には、この小さな生き物たちとの遭遇は予想外の感動でした。
ジェリコアコアラでは、4WD車でしかアクセスできない秘境のビーチや、砂丘から見る絶景など、フォルタレザ市内では味わえない大自然を満喫。帰りのバス代は往復で80レアル程度で、現地ツアーよりもかなりお得でした。
食べ物で失敗?シーフードの罠にご注意
海沿いの街ならではの新鮮なシーフードは確かに魅力的。しかし、路上の屋台で食べたアバラ(牡蠣の一種)で軽い食当たりを起こしてしまいました。症状は軽かったものの、旅行中の体調不良は本当に辛いものです。
安全で美味しいシーフードを楽しみたいなら、ビーチ・パーク周辺のレストラン街がおすすめ。少し価格は高めですが(一皿30-50レアル程度)、新鮮で安全な魚料理を堪能できます。特に地元の白身魚ペシャーダのグリルは絶品でした。
治安の実情は?夜の街歩きで感じたリアル
事前の情報収集では明るいうちに街を歩いてみると、昼間のフォルタレザは思った以上に安全でした。特にメイレレス地区やアルデオタ地区などの観光エリアでは、観光警察も巡回していて安心感があります。
ただし、日が暮れると状況は一変。特に中心部から少し外れた場所では、地元の人でも避けるエリアがあることを宿のスタッフから教わりました。夜間の移動は必ずタクシーかUberを使い、徒歩での移動は控えるのが賢明です。
忘れられない出会いと別れ
最後の夜、宿泊先のポウサーダ(民宿)のオーナー、ドナ・マリアさんと長い時間話しました。彼女は30年以上この街で観光業に携わってきた人で、フォルタレザの変化を目の当たりにしてきた生き証人でした。
「昔はもっと小さな漁村だったのよ。でも観光業が発達して、私たちの生活も豊かになった。ただ、昔の素朴さは少しずつ失われているのも事実ね」という彼女の言葉は、開発と保護のバランスについて深く考えさせられました。
朝食に出してくれたタマリンドのジュースとパォン・デ・アスーカル(砂糖パン)の素朴な美味しさは、高級レストランのどの料理よりも心に残っています。
次回行くなら気をつけたいポイント
振り返ってみると、フォルタレザは確実にまた訪れたい場所です。ただし、次回はもう少し準備を整えて臨みたいと思います。
まず、ポルトガル語の基本的な挨拶や数字は覚えておくべきでした。英語が通じる場所は限られているため、簡単な会話ができるだけで現地の人との交流が格段に深まります。
また、乾季(7月から12月)と雨季(1月から6月)の特徴をもっと理解しておけば良かったと感じます。私が訪れた7月は確かに雨は少なかったのですが、8月から9月にかけては貿易風の影響で風が強く、カイトサーフィンなどのマリンスポーツには最適な季節なんです。
最後に、フォルタレザは単なる通過点ではなく、それ自体が魅力的な目的地だということを強く実感しました。ブラジルの多様性を理解するためにも、リオやサンパウロとは違った文化と自然を持つこの街は、訪れる価値のある特別な場所です。
空港への帰り道、タクシーの運転手さんが「また戻ってこいよ、フォルタレザはいつでも君を待ってるから」と言ってくれました。その温かい言葉と共に、私の心にはもう次回の旅行計画が芽生えていました。