カナダとアメリカにまたがるロッキー山脈。その壮大な景色に憧れて登山を計画する人は多いのですが、実は私自身、初回の挑戦で道に迷い、予定より8時間も遅れて下山した経験があります。あの時の恐怖と、その後20回以上のロッキー登山で学んだ教訓をお伝えします。
なぜロッキー山脈はこんなにも危険なのか?
ロッキー山脈の登山が他の山域と決定的に違うのは、天候の急変です。標高3000メートルを超える峰々では、朝は快晴でも午後には雷雨に見舞われることが日常茶飯事。私が遭難しかけた日も、出発時は雲ひとつない青空でした。
特にカナディアンロッキーのバンフ国立公園周辺では、年間入山許可料が大人10.50カナダドル(約1100円)必要ですが、これには緊急時のレスキュー費用は含まれていません。実際のヘリコプター救助は1回あたり5000ドル以上かかることもあるんです。
コロラド州のロングスピーク(標高4346メートル)や、アルバータ州のマウントアシニボイン(標高3618メートル)など、人気の高峰ほど遭難事故も多発しています。現地のレンジャーステーションで確認した統計では、年間約200件の救助要請があるそうです。
実は知られていない?ベストシーズンの真実
多くのガイドブックには「7月から9月がベストシーズン」と書かれていますが、これは半分正解で半分間違い。確かに気温は安定していますが、実はこの時期が最も混雑し、しかも午後の雷雨リスクが最高になるんです。
私の経験では、6月下旬から7月上旬が穴場の時期。まだ観光客が少なく、朝露に濡れた高山植物が美しい季節です。ただし、標高3000メートル以上では雪が残っているため、アイゼンは必須装備となります。
現地の山小屋やキャンプ場は5月1日から10月15日まで営業しているところが多く、1泊あたり25-45カナダドル程度。予約は3ヶ月前から可能ですが、人気の場所は開始日に満席になってしまいます。
装備選びで絶対に失敗してはいけないもの
日本の山と同じ感覚で装備を選ぶと、本当に命に関わります。私が遭難しかけた原因の一つが、GPS機器への過信でした。ロッキー山脈の一部エリアでは、地形の影響で電波が届かない「デッドゾーン」が存在するんです。
紙の地形図とコンパスは絶対に持参してください。現地のアウトドアショップで購入できますが、1枚あたり15-20ドル程度します。特におすすめは「National Geographic Trails Illustrated Maps」シリーズ。防水加工されていて、GPSの座標も記載されています。
また、標高が高いため紫外線が非常に強く、サングラスと日焼け止め(SPF50以上)は必需品。現地のドラッグストアでも購入できますが、日本製のものの方が肌に合うでしょう。
意外と盲点なのが飲料水。ロッキー山脈の水は硬水で、日本人の体には合わないことがあります。浄水タブレットだけでなく、電解質補給のスポーツドリンクも携行することをおすすめします。
現地の人しか知らない隠れた名ルートはここ
観光地化されたバンフやジャスパーも素晴らしいのですが、地元のクライマーたちが愛用する秘密のルートがあります。その一つが、コロラド州グランドジャンクション近くのコロラド・ナショナル・モニュメント内のトレイル。
ここは国立公園ほど有名ではないため入場料も7ドルと安く、しかも絶景の岩峰群を間近で見ることができます。デビルズキッチントレイル(往復2.4キロ、所要時間2時間)は、初心者でも挑戦しやすく、赤い砂岩の奇岩群は写真映え抜群です。
もう一つの隠れた名所が、アルバータ州のカナナスキス・カントリー。バンフから車で1時間程度の場所にありながら、観光客はほとんど来ません。ここのハートマウンテンへのハイキングは、往復8キロで標高差800メートル。中級者向けですが、頂上からの360度パノラマは一生の思い出になるでしょう。
下山後に絶対食べたい地元グルメ
登山の疲れを癒やしてくれるのが、地元ならではの美味しい食事。カナディアンロッキー周辺なら、バイソンステーキは絶対に試してほしい一品です。カルガリーの「チャックワゴンカフェ」では、地元産バイソン肉のステーキが35カナダドル程度で味わえます。
コロラド州ではグリーンチリが名物。デンバーの「サンティアゴズ・メキシカン・レストラン」のグリーンチリブリトーは、登山で消耗した体に染み渡る美味しさです。価格も12ドル程度とリーズナブル。
意外な名物が、アルバータ州のサスカトゥーンベリーパイ。この紫色の小さな実は、ロッキー山麓にしか自生せず、甘酸っぱい味が疲労回復に効果的。地元のベーカリーで1ピース5ドル程度で購入できます。
最後に:ロッキー山脈があなたに教えてくれること
遭難しかけたあの日から5年が経ちましたが、今でもロッキー山脈に通い続けています。なぜなら、この山域には他では味わえない「畏敬の念」があるからです。
標高4000メートルを超える峰々の前では、人間の小ささを実感します。同時に、そんな厳しい環境でも生き続ける高山植物や野生動物の力強さに感動するんです。特に早朝、山肌がピンク色に染まる「アルペングロー」現象を目にした時の感動は言葉では表現できません。
確かにロッキー山脈の登山は危険を伴います。でも、しっかりとした準備と謙虚な気持ちがあれば、きっと人生を変える体験ができるはず。あなたもぜひ、この雄大な山々との出会いを楽しんでください。ただし、決して無理をせず、引き返す勇気も忘れないでくださいね。