アユタヤ観光で90%の人が見落とす「夜の遺跡」と「象乗り体験の罠」

なぜアユタヤは「昼間だけ」では絶対もったいないのか?

アユタヤ遺跡の夕暮れ風景

バンコクから北へ約80キロ、車で1時間半の距離にある古都アユタヤ。多くの観光客は日帰りツアーで昼間の遺跡群を駆け足で回って満足してしまいますが、実はそれではアユタヤの真の魅力の半分も体験していないのです。

私が初めてアユタヤを訪れたのは5年前の猛暑の8月でした。昼間の気温は38度を超え、石造りの遺跡は焼けるように熱く、とても落ち着いて見学できる状況ではありませんでした。しかし偶然宿泊することになった夜、ライトアップされた遺跡群を見て言葉を失ったのです。昼間の殺伐とした印象とは一変し、神秘的で荘厳な雰囲気に包まれた遺跡は、まさに別世界でした。

象乗り体験、その前に知っておくべき「不都合な真実」

アユタヤ観光の定番といえば象乗り体験ですが、ここには多くのガイドブックが触れない問題があります。象の健康状態や飼育環境に配慮していない業者が少なくないのが現実です。

私が目撃したのは、炎天下で休憩もろくに与えられず、観光客を乗せ続ける象たちの姿でした。象使いに話を聞くと「観光客が多い日は1日12時間働かせることもある」と言います。動物愛護の観点から、象乗り体験を選ぶ際は事前に施設の評判を調べることをお勧めします。

代わりに私がお勧めするのは「エレファント・ビレッジ」での象との触れ合い体験です。ここでは象に乗るのではなく、餌やりや水浴びの手伝いを通して象と交流できます。料金は300バーツ(約1,200円)と象乗り体験より安く、象への負担も少ないのが特徴です。

夕暮れ時の「ワット・チャイワッタナーラーム」が絶景すぎる件

アユタヤで最も写真映えするスポットとして有名なワット・チャイワッタナーラーム。しかし大多数の観光客は昼間に訪れ、強い日差しの中で慌ただしく写真を撮って去っていきます。

本当に美しいのは夕暮れ時です。西日がチャオプラヤー川面に反射し、遺跡のシルエットが黄金色に浮かび上がる瞬間は息をのむ美しさです。開園時間は朝8時から夕方6時まで、入場料は50バーツ(約200円)。夕暮れを狙うなら午後5時頃の到着がベストタイミングです。

地元の写真家に教えてもらったコツは、メインの仏塔から少し離れた東側の土手から撮影すること。観光客が少なく、遺跡全体を川と一緒に収められる穴場スポットです。

現地の人だけが知る「隠れ名所」アユタヤ・エレファント・パレス

ガイドブックにはほとんど載っていない場所ですが、地元の人に愛されているのが「アユタヤ・エレファント・パレス」の遺跡群です。正式名称は「ワット・プラ・シー・サンペット」の裏手にある王宮跡なのですが、観光ルートから外れているため訪れる人はまばらです。

ここの魅力は何といっても静寂です。有名な遺跡では常に観光バスのエンジン音や団体客の声が聞こえますが、この場所では鳥のさえずりと風の音だけが響きます。アユタヤ王朝時代の王族がどのような環境で暮らしていたかを肌で感じられる貴重な場所です。

入場は無料で、ワット・プラ・シー・サンペットから徒歩5分。現地のトゥクトゥク運転手に「Wang Luang」と言えば分かってもらえます。

アユタヤ名物グルメ「クイッティアオ・ルア」の正しい食べ方

アユタヤに来たら絶対に味わってほしいのが「クイッティアオ・ルア」という川エビの汁なし麺です。チャオプラヤー川で獲れる淡水エビを使った郷土料理で、バンコクではなかなか食べられません。

最も有名な店は「Krua Khlong Thom」という船上レストランで、アユタヤ駅から車で10分ほどの場所にあります。値段は1杯120バーツ(約480円)と観光地価格ですが、プリプリのエビと特製のタレが絡んだ米麺は絶品です。

注意点は食べ方です。テーブルに置かれた調味料(ナンプラー、砂糖、唐辛子、酢)を自分好みに調整するのがタイ流。最初は何も加えずに味わい、その後少しずつ調味料を足していくのがコツです。地元の人は必ず砂糖を一振りしてから食べ始めます。

夜のアユタヤで体験する「音と光のショー」

アユタヤ観光のハイライトとして、ぜひ体験してほしいのが「サラ・アユタヤ」での音と光のショーです。毎週金・土・日曜日の夜7時30分から約1時間、アユタヤ王朝の興亡を光と音響で表現するスペクタクルが開催されます。

会場は屋外の特設ステージで、入場料は大人600バーツ(約2,400円)。英語とタイ語の解説付きで、アユタヤ王朝の栄華から破滅までの400年の歴史が約1時間で体験できます。特に圧巻なのは、ビルマ軍による侵攻のシーンです。爆音と閃光で当時の戦いを再現する演出は、まるで映画の中にいるような臨場感があります。

会場は蚊が多いので、長袖長ズボンと虫除けスプレーは必須です。また雨季(5月〜10月)は突然のスコールで中止になることもあるため、事前に公式サイトで確認することをお勧めします。

トゥクトゥクの料金交渉、失敗しない「魔法の一言」

アユタヤでの移動手段といえばトゥクトゥクですが、外国人観光客には高額な料金を吹っかけてくる運転手も多いのが実情です。相場は1時間200バーツ(約800円)程度ですが、最初は500〜800バーツを要求されることもあります。

そんな時に効果的なのが「ラーカー・タオライ・クラップ?」(いくらですか?)とタイ語で尋ねることです。タイ語を話せることで地元の相場を知っていると思わせられ、法外な値段を提示される確率が大幅に減ります。

さらに効果的なのは、複数の運転手から見積もりを取ることです。「他の人は200バーツだった」と言えば、大抵の運転手は値段を下げてきます。ただし、安全運転で評判の良い運転手なら多少高くても利用する価値があります。地元の日本人駐在員に教えてもらった運転手「ソムチャイさん」は英語も堪能で、隠れスポットも案内してくれるのでお勧めです。

意外と知らない「アユタヤ王朝最後の王」の墓所

多くの観光客が見落とすニッチなスポットとして「ワット・ナー・プラメーン」内にあるアユタヤ王朝最後の王、スリエントラーティボーディー王の墓所があります。1767年のビルマ軍侵攻で王朝が滅亡した際、この王も戦死しましたが、その墓は戦火を免れ現在も静かにたたずんでいます。

墓所は本堂の裏手にひっそりとあり、案内板もタイ語のみで書かれているため、素通りしてしまう人がほとんどです。しかし400年以上続いた王朝最後の瞬間を物語る貴重な史跡として、歴史好きなら必見の場所です。

お坊さんに話を聞くと「王朝滅亡の日には今でも地元の人がお花を供えに来る」とのこと。アユタヤの人々にとって、この場所がどれだけ大切な存在かが分かります。

帰る前に立ち寄りたい「アユタヤ・ナイトバザール」

夕方6時頃からオープンするアユタヤ・ナイトバザールは、お土産探しに最適な穴場スポットです。バンコクの有名市場と比べて観光客が少なく、値段交渉もしやすいのが特徴です。

特にお勧めなのは「アユタヤ・オリジナル・ソープ」という遺跡の形をした石鹸で、1個50バーツ(約200円)。タイの伝統ハーブが配合されており、パッケージも可愛いので女性への土産に人気です。また、地元の職人が作る木彫りの仏像小物も、他では手に入らない一点物として価値があります。

バザールは夜9時頃まで営業していますが、8時を過ぎると店じまいを始める店も多いので、早めの訪問がお勧めです。アユタヤ駅から徒歩10分、帰りの電車の時間を気にしながらでも十分楽しめる立地です。

アユタヤは確かに日帰りでも楽しめる観光地ですが、一泊してゆっくりと古都の魅力を味わうことで、タイの歴史と文化をより深く理解できるはずです。次回タイを訪れる際は、ぜひ夜のアユタヤも体験してみてください。