フアヒンが「タイの軽井沢」と呼ばれる理由を現地で確かめてきた

タイ観光といえばバンコクやプーケットを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、タイ王室が愛し続ける避暑地フアヒンは、まさに隠れた宝石のような存在です。バンコクから車でわずか3時間、電車なら4時間程度でアクセスできるこの海辺の町で、私が体験した驚きの連続をお伝えしましょう。

なぜタイ王室はフアヒンを選んだのか?

フアヒンの美しい海岸線と王室の避暑地

フアヒンの歴史は1920年代、ラマ6世がこの地にクライカンウォン宮殿を建設したことから始まります。現在も王室メンバーが利用するこの宮殿は、一般公開はされていませんが、その荘厳な佇まいを遠くから眺めることができます。

王室が愛する理由は明確です。フアヒンの年間平均気温は28度前後で、バンコクよりも涼しく過ごしやすいのです。特に乾季(11月〜3月)の朝夕は驚くほど爽やか。私が12月に訪れた際、早朝6時の気温は22度で、海風が心地よく感じられました。

興味深いのは、フアヒンという名前の由来です。「フア」は頭、「ヒン」は石を意味し、海に突き出た岩の形が名前の由来となっています。この岩場は現在もフアヒンストーンと呼ばれ、絶好の撮影スポットとなっています。

絶対に見逃せない!フアヒン駅の魔法

美しい装飾が施されたフアヒン駅

フアヒン駅は、タイで最も美しい駅として知られています。1926年に建設されたこの駅舎は、タイ伝統建築とヨーロピアンスタイルが見事に融合した傑作です。入場料は無料で、24時間いつでも見学可能です。

駅構内には王室専用の待合室「サラ・ルアン・フア・ヒン」があります。現在は博物館として一般開放されており、入場料は30バーツ(約120円)。ここでしか見られない王室の鉄道旅行に関する貴重な資料が展示されています。

実は、この駅には現地の人だけが知る秘密があります。夕方5時頃になると、駅のホームから見える夕日が絶景なのです。観光ガイドブックにはほとんど載っていませんが、地元の写真愛好家たちが密かに集まる隠れスポットなんです。

シーフードが美味しすぎて困る?現地グルメ事情

フアヒンの新鮮なシーフード料理

フアヒンの最大の魅力は、なんといっても新鮮なシーフードです。フアヒン・ナイトマーケットは毎日夕方6時から深夜1時まで開催され、獲れたての魚介類を堪能できます。場所はフアヒンビーチから徒歩5分、ペッカセム通り沿いです。

特におすすめは「プラー・カポン・ヌン・マナオ」(スズキの蒸し魚ライム風味)。1匹200〜300バーツ(約800〜1200円)で、4人でシェアできるボリュームです。地元の漁師が朝獲りした魚を使うため、身がプリプリで臭みが全くありません。

意外な発見だったのが、フアヒンがパイナップルの産地だということ。タイ全体の生産量の約30%がこの地域で栽培されています。街中至る所でフレッシュパイナップルジュースが1杯30バーツ(約120円)で飲めるのですが、その甘さは日本で食べるパイナップルとは別物でした。

ビーチだけじゃない!隠れた絶景スポット

カオ・タキアブ(猿山)は、フアヒン南部にある標高272メートルの小さな山です。頂上まで車で約15分、入場料は20バーツ(約80円)。ここからの360度パノラマビューは圧巻で、フアヒンの海岸線を一望できます。

山頂には仏教寺院があり、地元の人々が熱心にお参りしています。特に満月の夜には多くの信者が集まり、幻想的な光景を目にすることができます。ただし、名前の通り野生の猿が多く生息しているので、食べ物を持参する際は十分注意が必要です。

あまり知られていないのがプランブリ森林公園です。フアヒン中心部から北に車で30分、入園料は40バーツ(約160円)。ここは野鳥観察の聖地として、世界中のバードウォッチャーが訪れます。早朝6時から8時の間に約80種類の鳥を観察することができ、運が良ければタイの国鳥である「サイチョウ」にも出会えます。

知らないと損する!フアヒン滞在の裏ワザ

フアヒンでの滞在を最大限楽しむなら、月曜日から木曜日の平日がおすすめです。週末は国内観光客で混雑し、ホテルの料金も2倍近くに跳ね上がります。私が平日に宿泊した海沿いの3つ星ホテルは1泊2500バーツ(約1万円)でしたが、同じ部屋が週末は4500バーツ(約1万8千円)になっていました。

交通手段で最も便利なのはソンテウ(乗り合いタクシー)です。1回10バーツ(約40円)で市内の主要スポットを回れます。ただし、観光客だと分かると「チャーター料金」を提示されることがあるので、「ソンラオバーツ」(10バーツ)とはっきり伝えましょう。

現地の人から教わった裏技があります。フアヒンヒルズワイナリーでは、毎週土曜日の午後2時から無料のワインテイスティングツアーを開催しています。事前予約不要で、タイ産ワインの試飲ができます。場所は市街地から車で20分、入場は無料です。意外にも、タイの赤ワインは日本人の口に合うフルーティーな味わいでした。

これだけは気をつけて!現地での注意点

フアヒンでの最大の注意点は日焼け対策です。海風で涼しく感じるため油断しがちですが、紫外線は東京の約3倍強烈です。私は2日目にして肩が真っ赤になり、現地の薬局でアロエジェルを購入する羽目になりました。SPF50以上の日焼け止めは必須アイテムです。

雨季(6月〜10月)に訪れる場合は、午後のスコールに要注意。毎日午後2時頃から1〜2時間程度の激しい雨が降ります。この時間帯はホテルでの休憩やマッサージを計画に入れておくと良いでしょう。マッサージの相場は1時間300〜500バーツ(約1200〜2000円)です。

地元の人が教えてくれた安全情報として、夜間のビーチ散歩は避けた方が賢明です。照明が少なく、足元が見えにくいため怪我のリスクがあります。夜景を楽しみたい場合は、ホテルのルーフトップバーやレストランのテラス席を利用しましょう。

フアヒンが教えてくれた「本当の贅沢」とは

3日間のフアヒン滞在で気づいたのは、この町の魅力は派手な観光地とは正反対にあることでした。朝6時の静かな海で地元の漁師と一緒に朝日を眺めたり、市場でおばあちゃんとカタコトの英語で会話したり。そんな何気ない瞬間に、本当の豊かさを感じることができました。

王室が100年以上愛し続ける理由が、滞在最終日についに理解できました。フアヒンは観光地として完璧に整備されているわけではありません。しかし、そのありのままの姿こそが、都市の喧騒を忘れさせてくれる最高の癒しなのです。バンコクから日帰りも可能ですが、最低2泊3日は滞在して、この町のゆったりとした時間の流れを体感してほしいと思います。