陸の孤島?ライレイビーチへの特殊なアクセス方法
クラビのライレイビーチは、実は道路では一切アクセスできない特殊な場所です。巨大な石灰岩の崖に囲まれているため、必ずボートでしかたどり着けないのです。
アオナン・ビーチから出発するロングテールボート(現地名:ルア・ハーン・ヤーオ)での移動時間は約15分。料金は片道100~150バーツ程度ですが、潮の満ち引きによって運航状況が大きく変わります。特に干潮時には浅瀬でボートが座礁しそうになり、最後の数十メートルは膝まで海水に浸かって歩くことも。これが想定外の事態その1です。
私が初めて訪れた際、干潮時刻を知らずに行ったところ、ボートの船頭さんに「今日は岸まで行けない」と言われ、100メートル沖から泳いで上陸することになりました。防水バッグを持参していなかったため、携帯電話が水没寸前という冷や汗体験をしました。
4つの個性的なビーチ、どこを選ぶ?
ライレイ半島には実は4つのビーチがあり、それぞれ全く異なる顔を持っています。
ライレイ・ウエストが最も有名で観光客向け。夕陽が美しく、レストランやマッサージ店が並んでいます。しかし、ここで注意すべきは潮の満ち引きによって砂浜の幅が劇的に変わること。満潮時には歩けるスペースがほとんどなくなり、レストランの椅子が波に洗われる光景も珍しくありません。
ライレイ・イーストは船着き場があるため最初に到着する場所ですが、実は泳ぐには適していません。マングローブが生い茂り、干潮時には泥だらけになります。
プラナン・ビーチは徒歩10分の距離にある秘境のような場所。ここには「プリンセス・ケーブ(プラナン洞窟)」があり、地元の人々が豊穣の神に祈りを捧げる神聖な場所とされています。洞窟内には木製の男性器が多数奉納されており、初めて見る観光客は驚きを隠せません。
トンサイ・ビーチはロッククライミング愛好家の聖地。世界中からクライマーが集まる場所で、ビーチよりも断崖絶壁を見上げている人の方が多いという不思議な光景が広がります。
ロッククライミングの聖地で起きる予想外の出来事
ライレイビーチが世界的に有名なのは、実はビーチそのものではなくロッククライミングのためです。石灰岩の断崖絶壁は初心者から上級者まで楽しめる多様なルートがあり、クライミングスクールも充実しています。
料金は半日コースで約1,500バーツから。しかし、ここで予想外だったのは、クライミング中に野生の猿が頻繁に出現すること。特にカニクイザルは人間の食べ物を狙って近づいてきます。私の友人は岩壁にぶら下がっている最中に、猿にエネルギーバーを奪われるという珍事を経験しました。
さらに驚くべきは、満月の夜に行われるナイトクライミングです。ヘッドライトを着けて岩壁を登る幻想的な体験ができますが、これは上級者限定。月明かりに照らされた海と岩壁のコントラストは、まさに別世界の美しさです。
知る人ぞ知る絶品グルメと意外な価格設定
陸の孤島という立地のため、ライレイビーチの食事は本土より2~3倍高いのが現実です。しかし、その中でも絶対に食べるべきは「ライレイ・ビューポイント・レストラン」のトムヤムクン(250バーツ)。崖の上にある絶景レストランで、眼下に広がるビーチを眺めながら食べるトムヤムクンは格別です。
意外なのは、最も美味しい食事が実はロッククライミングショップ併設の簡易食堂で食べられること。地元のクライマーたちが集まる「クレイジー・モンキー」では、本格的なタイ料理が破格の150バーツから楽しめます。特に「カオパッド・プー(カニチャーハン)」は、新鮮なカニをふんだんに使った絶品です。
夜になると、ビーチでファイヤーショーが始まります。しかし、これは観光客向けのパフォーマンスではなく、実は地元の若者たちが自分たちの楽しみのために始めたもの。参加者を募集していることもあり、勇気があれば一緒に火の輪を回す体験ができます。
満潮時に現れる秘密のラグーンへの冒険
ライレイビーチで最も知られていない秘密は、満潮時にだけアクセスできる隠れたラグーンの存在です。プラナン・ビーチの奥、岩壁の隙間から泳いで入る小さな入り江で、現地のガイドでも知らない人が多いほどの穴場スポットです。
このラグーンへは、満潮時刻の前後1時間しか入れません。岩の隙間を泳いで潜り抜ける必要があり、少しでもタイミングを間違えると岩に挟まれる危険性があります。しかし、その先に待っているのは直径約20メートルの完全にプライベートな天然プールです。
私が偶然この場所を発見したのは、地元の漁師に教えてもらったからでした。彼曰く「昔は恋人同士の秘密の場所だった」とのこと。現在でも1日に数人しか訪れない、まさに秘境中の秘境です。
帰りの船で直面する最大の試練とは?
ライレイビーチ滞在で最も予想外なのは、実は帰りの船の確保です。夕方以降、特に日没後は船の便数が激減し、最終便を逃すと翌朝まで島に取り残される可能性があります。
最終のロングテールボートは通常18時頃(乾季)、17時30分頃(雨季)ですが、天候や波の状況によって急に運航停止になることも。私は一度、突然のスコールで最終便がキャンセルされ、ビーチのハンモックで一夜を明かす羽目になりました。
もし取り残された場合、宿泊施設は「ライレイ・ビューポイント・リゾート」(1泊3,000バーツから)などの高級ホテルか、バックパッカー向けの簡素なバンガロー(800バーツから)の選択肢があります。しかし、当日予約は困難なため、事前の宿泊予約を強く推奨します。
興味深いのは、島に一晩滞在すると夜明け前の神秘的な雰囲気を体験できること。観光客が全くいない静寂のビーチで見る朝日は、日帰りでは絶対に味わえない特別な体験となります。
ライレイビーチは、単なる美しいビーチを超えた冒険と発見に満ちた場所です。予想外の出来事も含めて、それがこの陸の孤島の最大の魅力なのかもしれません。