ドミニカ共和国の隠れた聖地?実際は意外と有名だった
ドミニカ共和国の東部、ラ・ロマーナにあるカサ・デ・カンポは、世界中のゴルファーが憧れるリゾートです。私も「カリブ海の秘境でゴルフなんて贅沢」と軽い気持ちで訪れましたが、実際は想像以上にメジャーな場所でした。空港からリゾートまでは約30分のドライブですが、道中で見える景色からして既に特別感が漂います。
このリゾートには3つのチャンピオンシップコースがありますが、特に有名なのがティース・オブ・ザ・ドッグ(Teeth of the Dog)というコース名。直訳すると「犬の歯」という、なんとも物騒な名前が付いています。設計者はピート・ダイで、1971年にオープンして以来、世界のトップ50コースに常にランクインしているモンスターコースなんです。
プレー料金の現実を知って震える?
正直にお話しすると、プレー料金を見た瞬間に膝がガクガクしました。ティース・オブ・ザ・ドッグのプレー料金は1ラウンド約400-500ドル(季節により変動)。カート込みとはいえ、日本の高級コース以上の価格設定です。しかも、これはゲスト料金で、リゾート宿泊者にはディスカウントが適用されます。
朝8時頃のスタートがベストですが、カリブ海の日差しは想像以上に強烈。日本の夏ゴルフとは比較にならない暑さと湿度に、最初の3ホールで既にバテそうになりました。水分補給用のクーラーボックスがカートに標準装備されているのも納得です。プレー時間は約5-6時間を見込んでおいた方が良いでしょう。
「犬の歯」に噛まれる瞬間、それは突然やってくる
コース名の由来でもある「犬の歯」状のサンゴ礁が、まさにプレーヤーを待ち受ける罠なのです。特に有名な5番パー3ホールは、カリブ海を背景にした絶景ホールですが、グリーンの手前とサイドが全てサンゴ礁と海。ピンまでの距離は約150ヤードですが、風の影響で番手選択が非常に難しい。
私は2回プレーしましたが、1回目は完全に風を読み間違えて海ポチャ。ボールが白いサンゴ礁の間に消えていく様子は、美しくも残酷でした。現地のキャディさんに聞くと、このホールだけで1日に100個以上のボールがロストするそう。まさに「美しき悪魔」と呼ぶにふさわしいホールです。
意外だったのは、7番と8番ホールでした。海沿いコースというイメージが強いのですが、実はこの2ホールは内陸部を通る緑豊かなホール。ヤシの木やトロピカルフラワーに囲まれ、まるで違うコースにいるような感覚になります。
キャディの技術が半端ない?現地スタッフの驚きの能力
カサ・デ・カンポのキャディシステムは、正直期待していませんでした。しかし、実際に一緒にラウンドしたキャディのカルロスさん(30代)の技術には驚かされました。風の読み方、グリーンの傾斜、さらには私のスイングの癖まで、わずか3ホールで完全に把握してしまったのです。
キャディフィー(チップ含む)は約50-80ドルですが、この投資は絶対に必要です。特にグリーン上でのラインリーディングは、現地の芝の特性を知らない観光客には不可能に近い。バミューダグラスの上をボールがどう転がるか、彼らは感覚的に理解しています。
面白いエピソードがあります。16番ホールのティーショットで、私は右サイドの安全なルートを狙おうとしました。しかしカルロスさんが「ノー、ノー、レフトサイド!」と強く勧めてきます。理由を聞くと「午後2時の風は海から陸向きに5メートル吹く。あなたのスライス癖なら左サイドから風で戻ってくる」と説明されました。半信半疑で従ったところ、まさにフェアウェイセンターに着弾。彼らの経験値は本物でした。
アフターゴルフの楽しみ、意外な発見がここにある
プレー後のクラブハウスでの時間が、実は一番印象に残っています。19番ホール(クラブハウスのバー)でのマヒマヒ(シイラ)のグリルは絶品で、レモンとハーブの効いたソースが疲れた体に染み渡りました。価格は約35ドルと決して安くありませんが、窓から見えるカリブ海の夕景を眺めながらの食事は格別です。
クラブハウスで出会った常連のアメリカ人ゴルファー、ジムさん(60代)から聞いた話が興味深かったです。彼は過去15年間、毎年2回このコースを訪れているそうですが、「実はコース設計者のピート・ダイは、建設中に地元漁師たちから海流の情報を聞いて回った」という裏話を教えてくれました。だからこそ、風や潮の流れを計算したホール配置になっているのだとか。
知る人ぞ知る、早朝プレーの特典
現地スタッフから教えてもらった秘密の楽しみ方があります。朝6時30分スタートのトワイライト料金(約300ドル)を利用すると、通常料金より安くプレーできるだけでなく、朝もやの中でのゴルフという幻想的な体験ができるんです。特に海沿いホールでは、朝日がサンゴ礁を照らす瞬間を見ることができ、写真撮影には最高のシチュエーション。
ただし注意点として、雨季(5月-10月)は午後にスコールが発生しやすいため、朝のスタートが基本となります。私が2回目に訪れた9月は、14番ホール付近で激しいスコールに遭遇し、約1時間クラブハウスで雨宿りすることになりました。しかし、雨上がりのコースの美しさは格別で、芝の緑がより鮮やかに見えたのは印象的でした。
リゾート内の移動は専用カートまたはシャトルバスが利用でき、宿泊者は無料です。空港からの送迎サービス(有料・約80ドル)も利用できますが、レンタカーでの移動も可能。ただし、ドミニカ共和国の交通事情を考えると、送迎サービスの利用を強くお勧めします。
このコースは確かに「世界トップクラス」の称号に恥じない素晴らしいコースでした。しかし同時に、ゴルフの技術だけでなく、自然への敬意と謙虚さを教えてくれる場所でもありました。「犬の歯」に噛まれながらも、また挑戦したくなる。それがカサ・デ・カンポの魔力なのかもしれません。