憧れのポジターノ、でも現実は甘くない?
インスタグラムで見かける美しいレモン色の建物と青い海。アマルフィ海岸の宝石と呼ばれるポジターノに憧れを抱く人は多いでしょう。でも実際に行ってみると「こんなはずじゃなかった」という声も少なくありません。私も初回訪問時は準備不足で大変な目に遭いました。
ポジターノはナポリから車で約1時間30分、電車とバスを乗り継げば2時間ほどの距離にあります。人口約4000人の小さな町ですが、年間を通して世界中から観光客が押し寄せる人気スポットです。美しさの裏に潜む現実を知って、賢く楽しみましょう。
階段地獄は本当だった!歩きやすい靴は必須
ポジターノ最大の試練は、とにかく階段が多いことです。メイン通りのヴィア・デイ・ムリーニから海岸までは約300段の階段を下る必要があります。美しい景色に見とれながら下りるのは楽しいのですが、問題は帰り道。真夏の暑さの中、重いお土産を持って階段を上るのは想像以上に大変です。
特にマリーナ・グランデ(メインビーチ)から町の中心部へ戻る際は、覚悟が必要です。現地の人たちは慣れているので軽やかに歩いていますが、観光客は途中で息切れして休憩している光景をよく見かけます。
意外と知られていないのが、町内を走る小さなオレンジ色のローカルバス「SITA」の存在です。料金は片道1.3ユーロで、主要ポイント間を結んでいます。上手に活用すれば体力を温存できますよ。
レストラン選びで失敗しないコツは?
ポジターノのレストランは景色が良い分、料金も観光地価格です。海の見えるテラス席でのランチは一人50~80ユーロは覚悟しましょう。でも、せっかくならリモンチェッロと新鮮な魚料理は味わいたいものです。
地元の人に教えてもらった穴場が、メイン通りから一本奥に入った「Da Adolfo」というビーチレストランです。ここは赤い魚のマークが目印で、小さなボートで送迎してくれる隠れ家的スポット。観光客向けのレストランとは一味違う、家庭的な雰囲気とリーズナブルな価格が魅力です。
避けたいのは、バス停周辺の客引きが激しいレストランです。メニューに日本語表記があるところは観光客向けで割高になる傾向があります。現地の人が普通に食事をしているかどうかが、良いレストランを見分けるポイントです。
意外と知らない?ポジターノの隠れた魅力スポット
多くの観光客はメインビーチと中央広場で満足して帰ってしまいますが、実はポジターノには隠れた魅力スポットがあります。
まず、サンタ・マリア・アッスンタ教会の内部にある13世紀のビザンチン様式のマジョリカタイル。外観はシンプルですが、内部の装飾は息をのむ美しさです。入場は無料で、朝8時から夜8時まで開放されています。
もう一つのおすすめが「センティエロ・デリ・デイ(神々の小道)」と呼ばれる古い遊歩道です。ポジターノからノチェッレまで約5キロの山道で、所要時間は約2時間。途中、海岸線を一望できる絶景ポイントがいくつもあります。観光バスでは絶対に見ることができない、地元の人だけが知る秘密の景色に出会えます。
ただし、この遊歩道は整備状況が季節によって変わるため、出発前に観光案内所での確認が必要です。
買い物で後悔しないために知っておきたいこと
ポジターノのお土産といえば、レモン製品とセラミック製品が定番です。でも価格差が大きいので注意が必要です。
レモンチェッロは同じ商品でも店によって価格が2倍近く違うことがあります。メイン通りの店舗は立地が良い分、価格も高め。地元の人が利用する小さな食材店の方が良心的な価格で購入できます。
セラミック製品については、「Made in Positano」と表示されていても実際は他の地域で作られたものが多いのが現実です。本当にポジターノ製の陶器を求めるなら、工房を直接訪ねるのがおすすめ。Via dei Mulini沿いにある小さな工房では、職人さんが実際に作業している様子を見ることができます。
意外な掘り出し物が、地元産のオリーブオイルです。観光客にはあまり知られていませんが、アマルフィ地方のオリーブオイルは品質が高く、価格も手頃です。重いのが難点ですが、本当に美味しいのでおすすめです。
宿泊するなら絶対に知っておきたい裏事情
ポジターノの宿泊施設は大きく3つのエリアに分かれます。海沿いのラグジュアリーホテル、中腹の中級ホテル、そして山側のB&Bです。
海沿いのホテルは確かに景色は最高ですが、夜中まで続くレストランの騒音が問題になることがあります。特に夏場の週末は、テラスでの食事やパーティーで深夜まで賑やかです。
中腹エリアのホテルが実は一番バランスが良いと現地の人に教わりました。海への アクセスも徒歩10分程度で、夜は静かに休めます。料金も海沿いの半額程度に抑えられることが多いです。
山側のB&Bは価格重視の旅行者には魅力的ですが、荷物を持っての移動が大変です。また、夜遅くに外出する際は暗い階段道を歩くことになるため、女性の一人旅には不向きかもしれません。
宿泊予約の際は、必ず「階段の有無」を確認しましょう。ポジターノのホテルの多くは、メイン道路から階段でアクセスする構造になっています。スーツケースを運んでくれるサービスがあるかどうかも重要なポイントです。
現地の人だけが知る最高の写真スポット
インスタグラムでよく見る定番アングルとは違う、とっておきの撮影スポットがあります。それが「フォルニッロビーチ」近くの岩場です。メインビーチから徒歩15分ほど東に歩いた場所にある小さな入り江で、観光客はほとんど来ません。
ここから振り返って撮るポジターノの全景は、まさに絵葉書のような美しさ。夕方の光の中で撮影すると、建物のパステルカラーが一層映えます。地元の漁師さんが教えてくれた秘密の場所で、商業写真でも使われることがあるそうです。
もう一つのおすすめ撮影タイムが、早朝6時頃です。観光客がまだ活動を始める前の静寂なポジターノは、昼間とは全く違う表情を見せてくれます。朝市の準備をする地元の人々の日常風景も、旅の思い出として価値ある一枚になるでしょう。
帰りの交通手段で失敗しないために
ポジターノからの帰路で最も注意が必要なのがバスです。特に夏の観光シーズンには、バス停に長蛇の列ができることがあります。最終バスは季節によって時刻が変わるため、宿泊先で必ず確認してください。
意外と便利なのが水上タクシーです。料金は陸路の3倍程度しますが、渋滞に巻き込まれることなく、海からの絶景を楽しみながら移動できます。アマルフィまでは約30分、料金は1人35ユーロ程度。数人のグループなら検討する価値があります。
車をレンタルする場合は、狭い山道での運転に慣れていない人にはおすすめしません。対向車とのすれ違いが困難な箇所が多く、地元ドライバーのスピードについていくのは大変です。駐車場も限られており、1日20~30ユーロの料金がかかります。
ポジターノは確かに美しい場所ですが、事前準備と心構えがあればより深く楽しめる場所です。階段対策、レストランの選び方、隠れスポットの存在を知っていれば、きっと特別な思い出になるはずです。現地の人との何気ない会話から生まれる発見も、ポジターノ旅行の醍醐味の一つかもしれませんね。