リヤドの古都で迷子になった私が発見した「本当は教えたくない」隠れスポット

サウジアラビアの首都で、まさかこんなに魅力的だなんて

正直に言うと、リヤドへの旅行を計画した時、私は半信半疑でした。砂漠の真ん中にある近代都市って、一体何があるの?そんな疑問を抱えながら降り立ったキング・ハーリド国際空港。でも、この先入観は見事に覆されることになります。リヤドは単なる石油マネーで作られた人工都市ではなく、古い文化と最新技術が絶妙に融合した、驚きに満ちた場所だったのです。

歴史地区ディルイーヤ、ここで私は時空を超えた?

リヤド中心部から車で約30分、ディルイーヤ歴史地区に足を踏み入れた瞬間、私は息を呑みました。ここは18世紀に建設されたサウジアラビア王国発祥の地で、2010年にユネスコ世界遺産に登録された泥レンガ造りの古都です。

入場料は大人50リヤル(約1,800円)で、開園時間は午前8時から午後6時まで。でも、絶対に午後4時頃に訪れることをお勧めします。なぜなら、西日が泥レンガの壁を黄金色に染める光景は、まさに絶景だから。

アッ=トゥライフ地区を歩いていると、突然現地ガイドのアブドゥルさんに声をかけられました。「この壁の厚さを見てください」と指差した先には、なんと1メートル近くもある分厚い壁が。これは夏の酷暑(50度を超えることも)から住民を守るための知恵なのだそうです。現代の高層ビルにも負けない、先人たちの建築技術に驚かされます。

マスマク要塞で聞いた、教科書には載らない秘話

市内中心部に戻り、マスマク要塞へ向かいました。1902年、若きアブドゥルアジーズ・イブン・サウード(後の初代国王)がこの要塞を奪還し、現在のサウジアラビア王国の礎を築いた歴史的な場所です。

入場料は無料で、土曜日から木曜日の午前8時から午後8時まで開放されています。要塞内の博物館で、私は興味深い話を聞きました。実は、この要塞攻略は映画のようなスリリングな作戦だったのです。イブン・サウードは わずか40名の仲間と共に夜闇に紛れて要塞に忍び込み、敵の寝込みを襲って勝利を収めたのだとか。

要塞の門には今も、当時の戦いで槍が突き刺さった跡が残っています。触ってみると、ザラザラとした質感からリアルな歴史の重みを感じることができました。

キングダム・センターの展望台、でも本当のお勧めは…?

リヤドのランドマークといえば、高さ302メートルのキングダム・センター。99階の展望台(入場料30リヤル、約1,080円)からの眺めは確かに素晴らしいのですが、私がお勧めしたいのは実は別の楽しみ方です。

それは、地下2階にあるフードコート。ここで現地の人たちと一緒にサウジアラビアの国民的料理カブサを食べてみてください。スパイスの効いた炊き込みご飯に羊肉や鶏肉がのった料理で、一皿25リヤル(約900円)程度。地元の家族連れに混じって食べると、観光地では味わえない庶民的な温かさを感じられます。

ここで出会ったサウジ人のファハドさんは流暢な英語で「本物のカブサを食べたいなら、金曜日の昼過ぎにモスクの近くの小さな食堂に行くといい」と教えてくれました。

国立博物館で知った、砂漠の民の驚くべき知恵

サウジ国立博物館(入場料15リヤル、約540円)では、イスラム教以前のアラビア半島の歴史を学ぶことができます。開館時間は土曜日から木曜日の午前9時から午後8時まで。

ここで私が最も驚いたのは、古代アラビア人の天体観測技術です。砂漠を旅する遊牧民たちは、星座の動きを正確に読み取って方角を判断していました。現在のGPSにも負けない精度で、数千年前から砂漠を縦横無尽に移動していたのです。

博物館の学芸員ファーティマさんは、「多くの人がサウジアラビアの歴史は石油発見から始まったと思っているけれど、実際には数千年にわたる豊かな文明があったのよ」と誇らしげに説明してくれました。

スークでの値切り交渉、失敗から学んだコツとは?

アル・バサテン地区の伝統市場(スーク)での買い物は、リヤド観光のハイライトのひとつ。ここで私は手痛い失敗を経験しました。

最初に目をつけたのは美しい手織りの絨毯。店主が「800リヤル(約28,800円)、特別価格だ」と言ってきたので、「600リヤルではどうか」と提案したところ、あっさりOK。喜んで購入したのですが、後で隣の店を見ると、同じような絨毯が400リヤルで売られていました。

地元の人に聞くと、「最初の提示価格の3分の1から交渉を始めるのが基本」だと教えてもらいました。また、「一度店を出る素振りを見せると、店主が追いかけてきてさらに安くしてくれることが多い」というコツも。

エッジ・オブ・ザ・ワールドへの冒険、準備不足で大失敗?

リヤドから北西に約90キロ、エッジ・オブ・ザ・ワールド(世界の果て)と呼ばれる断崖絶壁への日帰りツアーに参加しました。ツアー料金は一人250リヤル(約9,000円)で、朝7時出発の10時間コース。

しかし、私は大きな失敗をしました。スニーカーで参加してしまったのです。現地は岩場が多く、滑りやすい砂地もあるため、本格的なトレッキングシューズが必須でした。ガイドのハーリドさんに「大丈夫ですか?」と心配されながら、恐る恐る断崖に近づく羽目に。

でも、その苦労を忘れさせる絶景が待っていました。標高1,000メートルの断崖から見下ろす砂漠の大パノラマは、まさに地球の雄大さを実感させてくれます。特に夕日が沈む瞬間の空の色の変化は、写真では絶対に伝わらない美しさでした。

現地の人だけが知る、本当の美味しいお店

観光地のレストランでは味わえない本物の味を求めて、現地の友人に案内してもらったアル・カリージ地区の小さな食堂。店名も英語表記がなく、完全に地元密着型のお店です。

ここで食べたムタッバル(焼きナスのペースト)とハリース(小麦と肉の煮込み料理)は、今まで食べたアラブ料理の中で最高の味でした。特にハリースは、12時間以上煮込んで作る伝統料理で、まるでお母さんの手料理のような優しい味。一皿わずか15リヤル(約540円)という安さにも驚きました。

店主のアブ・アフマドさんは70歳を超える高齢ですが、「この味を次の世代に伝えるのが私の使命」と話してくれました。彼の息子も同じ店で修行を積んでおり、三世代に渡って守られてきた味なのだそうです。

宗教的配慮とマナー、知っておかないと恥をかく?

サウジアラビア旅行で最も注意が必要なのは、イスラム教の習慣への理解です。私も最初は戸惑うことが多くありました。

一日5回の礼拝時間になると、すべてのお店やレストランが一時的に営業を停止します。特に金曜日の昼の礼拝時間(約1時間)は完全に街が静まり返るので、この時間帯は屋外観光がお勧めです。

また、ラマダン月(イスラム暦の9月)に訪れる場合は、日中の飲食に配慮が必要です。私が訪れた時期がちょうどラマダンで、昼間は人目につかない場所で水分補給をするよう現地ガイドからアドバイスを受けました。

服装についても、男性は半ズボンや肌の露出を避け、女性は長袖・長ズボンが基本。現地の人々はとても親切で、マナー違反があっても優しく教えてくれるのですが、事前に知っておくと旅がより快適になります。

帰国前夜、リヤドの夜景に感動した理由

最後の夜、ホテルの屋上から眺めたリヤドの夜景は忘れられません。高層ビル群がライトアップされ、まるで未来都市のような美しさ。でも、その光の向こうに古いディルイーヤの遺跡がぼんやりと浮かんでいるのを見た時、この街の持つ時間の層の厚さを改めて感じました。

リヤド滞在中に出会った人々の温かさ、想像以上に豊かな歴史、そして現代と伝統が共存する独特の雰囲気。旅行前の先入観は完全に覆され、「また必ず戻ってきたい」と心から思える場所になりました。

特に印象的だったのは、現地の人々が自分たちの文化に誇りを持ちながらも、外国人旅行者を温かく迎えてくれたこと。言葉の壁を超えて心が通じ合う瞬間が何度もあり、これこそが旅の醍醐味だと実感しました。